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源平観戦日記


能・狂言・平曲による平家物語の世界 語りの伝承~巻十三

2009年8月15日/於横浜能楽堂/14:00開演 16:30終了

【演目】
平曲「維盛入水」(須田誠舟)
狂言「二千石」(野村萬斎 高野和憲)
能「舟維盛(※新作能)」 (桜間右陣 ほか)


■毎年この時期にこの場所で公演されているようです。平曲&(間に狂言&)能で平家モノフルコース。
一度行ってみたいな~と思ってたら、ちょうど「ぴあ」サイトを閲覧してるときに見つけたので、予約しました。初日とかではなかったのですが、正面1列。野村萬斎との距離3Mってカンジで、きゃっほー!でした。
■お客さんは私の親世代中心。みんな挨拶しあってる。どうやらお客さんの半分以上は「お教室」仲間とからしい。私の親世代の集まりだといつも目にする光景なのですが、「こういう会場で通路をあけずにたむろする」。この能楽堂でもそうなっちゃってて、あちこちで渋滞勃発。お客さんの平均世代が上ですとマナーが良いので、この渋滞さえなければいいんだけどなぁ。しかし開演後の静かさはさすが。
以下感想です。古典芸能にはまったくの素人としての感想としてご覧ください。

【平曲 維盛入水】
■正統派なんだと思います。
■事前にテキストが配られてて、みんなそれを見ながら聴いてましたが、節をつけて語るわけなので、ものすごーく進みはゆっくりなんですよ。だから、テキスト見ないで聴いてたほうがいいと思いました。見ながらだと目のほうが先に進んじゃうし。
■テキストは平家物語巻十ほぼそのまんまの印象です。本で読んじゃうと1.5Pくらいなんですけど、これに40分くらいかける。維盛が飛び込む前にうだうだ言い始めるくだりは、「はよしろよ!」とせかしたい気持ちになりました(笑)。でも節回しが、最後ぐぐーっと盛り上がって行き、最後に一気に静けさが訪れるあたりは、感情移入してました。
この演目のとちゅうに事件勃発。私の3-4つ後ろの席に座ってらしたかたが、急に体調が悪くなって倒れ?てしまったようでした。結局、そのまま病院に行かれたのか、どうされたのかはわからないのですが、その間、演者はまったく中断や動揺なく演奏続けていらっしゃいました。すごい。。。

【狂言 二千石】
■野村萬斎がボケ役なのかとおもいきや、ツッコミのほうでした。あ、狂言だからボケ・ツッコミじゃないか。
■主人(野村)に報告なく勝手にずっと出仕してなかった太郎冠者(高野)。主人は叱責(=斬る)する気まんまんで太郎冠者を呼び出しますが、太郎冠者が不在の間に京旅行をしてたと聞いて、「京の報告したら許してやる」と出だします。
太郎冠者は、じゃあ都で流行ってる謡をご披露しますーと謡いますが、なんとそれは、主人の先祖がかつて後三年前九年の役での恩賞として賜った(よく聞き取れなかったんだけど、そういうことなんだと思う)謡。
ご先祖様想いの主人は「都で流行ってたんじゃなくて、お前が不用意にあちこちで謡って、流行らせたんだろがー!」とブチ切れ、太郎冠者に斬りかかります。あやうし太郎。
しかし太郎冠者はそこで、「そのリアクション、ご主人さまの亡き父上にそっくり!」と感動のそぶりで発言。
ご先祖想いの主人は「えっ、そう?」とここで乗ってしまい、太郎冠者と一緒に「親に似るなんてうれしい!」と感動。斬りつけようとしてたその太刀を太郎冠者にプレゼントしちゃって、最後は太郎冠者と一緒にニコニコ笑顔。
…というあらすじでした。細かいところのセリフが聞き取れなかったんだけど、おおよそはこんなカンジ。
■どうして「平家物語の世界」のインターバルにこれを選んだのかよくわからないのですが、主人の先祖が奥州征伐で功をたてた…と言ってたからかな?
■次の能に比べると、セリフは断然聞き取りやすかったです。萬斎さんより太郎冠者のほうが聞きやすかったんだけど、それと狂言としてのスキルはまた別問題なのかな。

【能 舟維盛】
■これが本日のメイン。
主宰のひと(維盛役で、能演者一門の当主さんだそうです)のところに維盛の縁につらなる人からリクエストが届いたことがきっかけで作られた新作能だそうです。この「新作のきっかけ」に、心の狭い私は微妙に引いたんですけど、心狭くなく考えたら、普通にほほえましく温かいエピソードなんだろうな。
もし私のところに「維盛の縁者なんですけど、維盛主人公で漫画描いて」ってリクエスト来たら、「だったら自分で何か発表するなり動けばいいのに。」と思ってしまうかも。私なんかにそんなリクエスト来ることないので、まったく妄想の心配ですが…。
■あらすじは、こんな感じです。
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法住寺から来た僧が、熊野で維盛に回向をささげてたら、波の向こうから舟が。そこには、おもざしはやつれ果てているものの、どこか非凡さを感じさせる男性が乗っていました。
その人は、自分は熊野で入水した平維盛だと名乗ります。入水に至る身の上を語り、そして法住寺での後白河院五十御賀にて舞い、「桜梅少将」の名を得た、青海波を舞います。
ひとしきり舞い終えたあと、今の修羅の苦しみを語った維盛は、やがて波の向こうにふたたび去っていくのでした。
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平家の人、能で化けて出すぎ。
■夢幻能テンプレートの話なんじゃないかな。素人心にもめっちゃ定番展開なんだと思った。「覆面をしたライバルの正体は、主人公の親兄弟」みたいな。
それにしても、夫婦親子のしがらみを断ち切って極楽浄土を目指し入水した維盛なのに、修羅に苦しんでるっていうのは気の毒です。て言っても、実はわたくし最後のほうのセリフが全然リスニングできず、修羅道に苦しんでるうんぬんは、開始前の挨拶で主宰の人が言ってたあらすじ説明の受け売りです。
■この作品、舞台中央に舟を模したギミックが鎮座します。最初は黒い布で覆われてて、中から維盛が出てくるのです。最初は深い青の衣装を着ていた維盛ですが、青海波を舞うシーンで、舞人のお召し替えしてくれます。維盛は貴族なんだから、別に舞人の衣装着る必要ないと思うんだけど、お話としての区切りがわかりすいようにあの衣装なのかな。(衣装は舞人衣装だったけど、謡のなかでは「桜を簪に…」って言ってた)
この着替えがめっちゃ長い。しかも堂々と舞台ど真ん中(着替え場所である舟が中央にあるので仕方ないんですけど)。たぶん、これは目に入らないふりをして、その奥で「いよー(ポン)」とか演奏してるほうに耳を傾けるのが、お客としてのお約束なんだと思うんですけど、慣れてない私は
「あっ、そこ、その袖を右に!」とか「ああっ、そこ曲がってるよ!」とか着替えをめっちゃ気にしてしまいました。
お召し替えは2回。早着替えという概念がないところが新鮮でした。さすがスローな世界・能。
最後、静かに静かに維盛が去っていくところは、感動的でした。凪いだ海が見えたような気がした。
■この新作が、能作品としてどうなのか、私には判断がつかないのですが、無知ゆえの意見として言うなら、せっかく今作品にするなら、現代としての解釈なり方向性なりをつけてもよかったんじゃないのかな?と思いました。
たとえば、維盛の苦しみって、「封建時代ならではの、身分や立場ゆえの苦しみ」ってよりも、「自分の限界をつきつけられたことがしんどい」「がんばるのがもうしんどい」っていう、現代的な苦しみでもあると思うんですよ。そこを語らせるとか。
そういう意味では、以前に「短っ!」としか評価してなかった、永井荷風の維盛戯曲って、実はすごいのかなって思ったりしました。「今、この題材でやりたい理由」みたいなのが、あちらにはある。
いやしかし、夢幻能を逆手にとるのもアリかも。歴史上の100人夢幻能連発とか。維盛がようやく帰ったと思ったら、次はサロメが来て舞うの。そんな呼び寄せ体質の僧侶の話。漫画にしたら面白いかしら。。。
by mmkoron | 2009-08-16 00:34 | その他映像・劇 等

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