源平観戦日記


第30話「平家納経」

■いやー、今回は思いがけず大人の時間清盛になっちゃいましたね。
しかし、内容が内容だけに、真夏の怖い話特集が夜10時開始ってのは、なかなか良かったのではないでしょうか。そして見せ場の開始時間すら思うままにならぬ崇徳院さま…。

■最初は讃岐で穏やかに過ごす崇徳院の様子。
地元の人に純朴な好意を寄せられて、崇徳は心おだやかに過ごしています。「お歌のことはわからないけど、うつくしい調べでございます」と素直に感想を言われて、崇徳は素直に嬉しそう。
彼は、「ここに流されてよかった」とつぶやきます。何が欲しくてあんな戦を起こしたんだろう、愚かだった…
人間不信を癒されて、本来の、芸術を愛する素直な性質に「我に返った」のでしょう。
■そして、保元の乱の勝者になった後白河と、愛妃・滋子の間には、無事に皇子が誕生していました。
すかさずお祝いしようと急ぐ清盛。兎丸達を博多に走らせるのですが、遅い遅いとせかすせかす。
兎丸達は「だったら博多を都の隣にもってこいやコラ!!」とブーブー言ってます。(ココ伏線。)
清盛は重盛や基盛を連れて院に参内しようとしますが、気楽な次男坊・基盛は堅苦しいのがニガテ。私はおうちで弟達の世話をして待ってますから、お兄ちゃんだけ行って来て~とか言ってます。
■しかし、そこに忍び寄るのがトラブルメーカー・時忠。
妹である滋子に皇子が生まれたのをこれ幸いに、彼は皇子の帝位擁立をたくらんでるのです。で、教盛と基盛を勧誘。院の近臣である成親の妹が重盛の妻ですから、そのルートで院に接近しようとしたわけです。
なぜこの人選?って思うわけですが、教盛は忠盛の子どもの中では、わりと血筋がよい部類なんですよね。
母方の曽祖父が、藤原師通(忠実のお父さん)です。もちろん、師通が身分低めの女性に産ませた子どもの血筋なのですが。
で、うっかり者の2人はうかうかと時忠の誘いに乗っちゃうのですが、あっさり二条帝にバレて清盛に怒鳴られる。
そりゃそうです。清盛は、「後白河のご機嫌を取りつつ、若く賢い二条帝の主導で政治を進める」プランでいるわけでして、お前ら何してくれるんのんじゃコラー!って感じでしょう。
二条帝がお怒りであることもあり、清盛はこの3バカに解官を命じます。クビってことですね。勿論、一生そうしろってことではなく、しばらく頭を冷やして反省しろってことですけど、基盛は自分のお気楽を深く反省します。
清盛に素直に謝りに行く基盛。清盛はそんな息子に言います。
お前は昔の自分に似ている。出来のいい兄弟を持つと、自分は気ままに好きなようになりがちだが、しかしお前にはお前の役割がある。大切な息子なのだと。
お父さんから「お前にはお前の役割がある。期待してる。だって、お前は俺にそっくりだから。」これは息子からしたらめっちゃ嬉しい言葉ですよねー。実際、基盛は目をキラキラさせてるし、たまたま通りがかってその様子を見ていた重盛はちょっと羨ましそうでした。
重盛は、清盛の感覚についていけてないトコロがあるから、その清盛から直々に「わしに似てる」って言われてる弟のこと、やっぱ羨ましいだろうなー。
そんなこんなで奮起した基盛は、内裏新築計画に加わって一生懸命仕事をし始めます。無事に造営が終わったら、そこで記念行事をしようと思って、その打ち合わせのために高野山へ旅立つことに。
元気に旅立とうとする息子を笑顔で見送る清盛と時子。しかし、これが彼との最後の別れになったのです。

■さて。讃岐で穏やかに暮らしていた崇徳院は、自分が世を乱したことを深く反省し、写経をしていました。この気持ちを伝えよう。そう思った崇徳院は、その写経を都の後白河に送ります。
里の人たちの素直な気持ちに触れた彼は、同じように素直な今の気持ちを弟に伝えようとしたんですね。
おそらく、これをちゃんと受け取っていれば、崇徳院にとっての戦や憎しみも終わり、今度こそ保元の乱が完全に終わったのでしょう。しかーし。
■後白河は、滋子と暮らして穏やかになってるにもかかわらず、この写経を「キモイ。呪いちゃうの? 送り返そう」と言い出します。しかも膝の上の憲仁(皇子)が、その中の一枚を破いちゃった。
その写経は、特に何のフォローもなく返送されちゃったみたいで、崇徳は茫然自失です。
彼は讃岐の空気ですっかり毒を抜かれてましたが、都は毒の巣なのです。しかし、崇徳にはそのへんの感覚がもうわからない。そこに追い討ちをかけるように、崇徳が大事に思っていた、自分の血を受け継ぐわが子・重仁がわずか22歳で亡くなったという知らせが。
■ここでまた彼の心に負のエネルギーが注入されてしまいます。よくも悪くも素直でまっしろな人なので、ちょっと突っつかれただけで簡単にブラック化しちゃうんですよね。
なぜ自分ばかりがこんな目に。そのどす黒い思いゆえに、崇徳は怨念の権化になってしまいます。そして王家を呪い、天皇家と民の地位を逆転させてやる!と呪詛し続けるのです。
■さて。こののろいの内容が興味深いですよね。革命宣言といいますか。後白河をのろっている、というよりも、思うようにならないこの世の中全てを呪うからこその言葉なのでしょう。

■ここで舞台は讃岐と都がちょっとつながります。高野山に行っていた基盛が帰ってきました。
なんと、物言わぬ骸となって。宇治川を渡る最中におぼれて死んでしまったというのです。こんなことまで夏休みっぽくしなくていいのに…。みなさんほんとに水の事故には気をつけましょうほんとほんとに!
基盛に遊んでもらっていた重衡が、わんわん泣き始めて、みんながしょげかえります。平家のこういうところが好きだわ。。。
最初は涙を堪えていた清盛ですが、池禅尼にガマンしなくていいんだ、泣いてやりなさいと促されると思いが堰を切って、基盛を抱えて号泣するのでした。
重盛も、最初は涙を流さないように溜めてガマンしてるんだけど、清盛が泣き始めるとボロボロ泣いてるの。この意地っ張りというか、情の深さがこぼれ出る感じは、やっぱ親子なんですよね。
■こうして不慮の死を遂げた基盛の冥福を祈るために西行がやって来ますが、そこで西行は気になることを言います。
基盛が宇治川を渡ろうとしていたちょうどそのとき、讃岐のほうから何か不吉なものが流れてくるのを見た…というのです。ここでドラマは一気に怪奇事件ファイル化してきました。
そこで差し込まれる、讃岐の院のご様子。

すっげーホラー。

里人も怖くて近づけなくなっちゃったのか、誰も居ない、荒れ果てた邸内を這いずり回り、のろいの絶叫を繰り返す崇徳院。ぎゃーこわいー。

■讃岐がそんなことになってるなんて知らない清盛のもとに、思わぬ客人が。藤原忠通です。彼は嫡男の基実を連れてきて、おもむろに上座を降りると、摂関家の知っている儀礼知識を題材にした書物を清盛の前に置きます。
そして、基実の妻に、清盛の娘がほしいとお願いするのです。
この書物は重要ですね。藤原氏が上位を独占できるのは、各種儀式のやり方を知ってるのが、彼らだけだからです。重要な仕事のマニュアルを自分たちだけで囲い込むことで、「私らしかできない仕事」を作っていったわけですね。
うちの会社とか、ここ数年「見える化」が進んでて、私も今までの自分の仕事を「見える化」してきます。ある仕事が自分にしかできない…という状態をなくすことで、休みが取りやすくなったり、業務配分しやすくなるメリットもあるんですけど、同時に、「自分だけが持ってるノウハウ」がなくなることで、自分の持つスキルの価値が暴落する不安もあります。
しかし藤原摂関家は、自分たちのスキル&知識の値を吊り上げてきたわけです。「風通しのよい組織」の間逆ですな。
■ですから、この忠通の行動は、自分たちだけのスキルを平家に見せちゃう危険行為です。しかしそれでも、彼は平家をある種対等のパートナーに選びました。摂関家の価値を少し下げてでも、摂関家を存続させる。これが、父を弟を追いやってひとり生き残った忠通の選択でした。
この描き方はいいですね。どんな人も、その人なりに考えて選び取った道がある…という。
しかし! 基実がイケメンじゃないおじさんなのは納得いかんわー!! 盛子が「すてきなお兄さん」って思って、その年齢に追いついたところで力尽きたように死んじゃうような旦那様なんだから(ここ私の妄想は言ってます)、もっと王子様っぽい人にしてほしかったー。ちなみに私は、まだ彼の顔は描いたことありません。敢えて描かないで漫画に出してます。

■清盛は、自分達の栄華が他者の犠牲の上に築かれようとしていることを自覚し、全ての人々の鎮魂のために、一族総出で写経をしようと思い立ちます。いわゆる「平家納経」です。
作業過程が描かれてるのが、すっごく興味深かったー。金箔のラインを貼ってく作業とか、かつてアナログで漫画描くときのトーン貼りだけで死にそうになってた私にとっては、もうムリムリ絶対無理!の精密作業です。
当時って、ライトもないし拡大鏡もないから、ほんとに限られた昼間の時間の中で、自分の目だけでやってたわけでしょ。すごいわ…。
こうして出来上がった平家納経。途中、時忠が二条天皇呪詛の疑いで出雲に流罪されちゃうなどの事件はありましたが、まぁそれはそれとして(無情)、一門のみんなは厳島神社にこの経典を納めるために船出します。
■しかし。ときはまさに、讃岐で崇徳院が断末魔の叫びのような呪詛を吐いているとき。
平家の船は嵐に巻き込まれます。ちょっと、屋島入りするときの大河「義経」を思い出しましたこのシーン。
あまりの酷い嵐に、皆は経典を海に投げ入れて祈りを捧げたことにしようと言い出しますが、清盛は、「厳島神社に奉納するまでが納経です。バナナはおやつに入りません。」精神で断固拒否します。
曰く、これは平家だけのものではない。死んでいった人々も含めた、全ての皆のためへの祈りなのだ、その中には崇徳院もはいっている。この経典はもう平家だけのものではない。責任を持って届ける!と。
■ここで、今回わざわざ忠通の話を差し込んできた理由もわかりました。摂関家のオンリーワン状態を進めようとした父と弟を滅ぼした以上、自分には家を守る責任があると、そういう矜持の保ち方を選んだ忠通を描くことは、「平家以外の人の思い」を紹介することでもあるわけですね。なるほど。
■経典を守り抜く決意をした清盛は、船室を出て、甲板で操舵する兎丸達に声をかけます。そして、盛国にも呼びかけます。「鱸丸」
漁師の子として海と対峙していた頃の名前で呼ばれて、盛国も嬉しそう。兎丸達も無茶なお願いで頼りにされるのは、それだけ自分達の力を信じてくれてるってことだから、キライじゃない。
皆が逆境を跳ね除けるエネルギーを込めて船を動かし、そして船は嵐を脱します。

■その頃、讃岐の空でも嵐が晴れ、朝の光が差し込んでいました。鳥の声、雨が上がって外に出てきたのか、子ども達の声。その穏やかで優しい日常の音を聞きながら、崇徳院はもとの表情に戻り、ゆっくりとその目を閉じたのでした。

■単に穏やかになって終わるわけではなく、怨霊になって終わるだけでもなく、
穏やかに→怨霊化→自分を取り戻して死んでいく の揺れを描いたのが、人間らしくて良かった。
素直な人だから、簡単に黒に染まっちゃうんだけど、もう一度我に返る。感情の触れ幅がものすごく大きい。でも、このドラマの彼は、それを何かをやり遂げて貫くエネルギーにまではできなかった。でも、そういう人のほうが大多数で、しかも彼は知らぬ顔で受け流さずにその中でもみくちゃになってでも生き抜いたのだから、全然恥ずかしいことじゃないはずなんです。
最後の表情は、「何一つおもうままにならなかった」そんな自分の一生を、それでも「しょーもないけど、仕方ないよなぁ(笑)」と肯定して受け入れることができたってことなのではないでしょうか。
信西の「自分が何者かを見つけたり!」じゃないけど、このドラマでは、誰かが思い通りになれないまま死を迎えることの救いとして、「自己肯定」を描いているようにも感じます。
■清盛は、今回のピンチを、逆境を恨まず前に進むエネルギーで切り抜けました。一緒に走っていた人々の中で、清盛が今も走り続けていられるのは、その性質ゆえです。
しかし、そんな清盛もいずれは、どうにもこうにも自分では思うようにならない力の中で打ちのめされることになるわけで。そのとき、彼にどういう救いが与えられるのか、それとも与えられないのか。今後が楽しみです。

■最後にトピック。

1)いよいよ初期メンバーが池禅尼オンリー状態に。
…彼女の死が、前時代の締めくくりにもなりますね。どう描かれるのか。

2)兎丸、恋愛成就おめでとー!
…手を出さず、彼女が「こんなトシ(って自分で言ってましたよね)」になるまで引いてたんですね。いい奴。

3)みんなでお経書いてるシーンが楽しかった
…重盛が書いている様子を、じっと見ている知盛(だよね?)。やらかしちゃう教盛、代理人に書かせてる忠清…。みんなキャラが分かれてていいね。途中で重盛?が「無量義経」って書いてますが、敢えて「義経」の文字を書かせてるのには何か意味があるのかしら?って勘ぐっちゃった。
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by mmkoron | 2012-07-30 00:33 | 大河ドラマ「平清盛」

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