源平観戦日記


第25話「見果てぬ夢」

■さて。これを書いているいま、大河は既に30話まで進んでます。1165年没の二条帝が崩御してますから、今回あらすじを書く25話(1158年スタート)からは7年くらい経ってるわけですね。でも、キャストがかなり入れ替わったから、もっと時間が進んだようにも感じるなぁ。
実際も、1159年前後で宮廷の顔ぶれも大きく変わってると思うので、こんな感じで「ずいぶん変わったよなぁ」って感じだったのかな。
■さてさて、今回は、齢50を過ぎてようやく充実期を迎えた信西の最後の輝きと、その裏で不満を溜め込む義朝が中心になる回です。


【信西】
■信西は、50を過ぎて政治の実権を持ち、もう仕事が楽しくて楽しくて仕方ない。財政をやりくりしてなんとか人材発掘のための大学寮を作ろうと四苦八苦していました。
それをほほえましく見ながら、妻の朝子が語るのは、昔の彼のおはなし。
中国から来た高僧をもてなそうとするも、中国語もわからずマトモに応対できない宮廷人のなかで、唯一流暢な中国語で応対をした信西。いつか日本の大使として中国にわたるときを考えて、彼は中国語を勉強してたんだと。そんな彼を、くだんの高僧は「生身観音だ!」と絶賛したそうです。

ぎゃー、まだ生きてるのに「生前の功績まとめ」が始まってるぅぅ!!

■大学寮を作りたい信西は、リストラによってお金を作ろうと思い立ちました。
無能な宮廷人をばっさばっさ。現代ではなかなか通らないこの策が、この時代は断行できちゃいます。
当然信西は恨みを買ってしまいますが、しかし信西はどこ吹く風で精力的に政治を行うのでした。
このころ、宮中は二条天皇親政派と、後白河派とに分かれ、どっちが政治の主導権を持つかで微妙な関係にありました。
信西は後白河派の宰相役として大ナタをふるい、特に二条派にムカつかれていました。しかし、彼の大ナタは二条派にだけ向いているわけではありません。
■信西にとって、同じ後白河側でありながら困り種になっているのは、藤原信頼の存在。
後白河のご機嫌をとる遊び相手というだけならよいのですが、後白河に官職をねだったりするところが困りモノ。また、後白河自身も政治的な勢力バランス感覚があるわけではなく、自分が注目されている状態ならそれでOKという人なので、信頼のおねだりを受け容れてしまう頼りなさがあるのです。
後白河は、信頼に望む官職に見合う能力がないことがわかるくらいのアタマはあるのですが、どうしても目先の楽しみにまけちゃうタイプなんですよね…
こんな風にフワフワした後白河に、信西は楊貴妃にうつつをぬかして国とわが身を滅ぼした「長恨歌」をプレゼントし、遠まわしに「能力のない寵臣の甘えに応えてちゃだめだよ」と忠告したのですが、どうもうまく伝わっていないようなのでした。


【義朝】
■信西から政治的パートナーに選ばれ、どんどん実力発揮の場を与えられている清盛に比べて、義朝はジリ貧状態。親を斬ったという陰口に耐えつつ、清盛に比べればたいしたことない役職に甘んじる日々です。
由良の病気もあってダウナーモードに陥っている義朝を気にして訪ねてきた清盛にも、意固地かつややイジケ気味な態度を見せます。東国に飛び出して強くなって帰ってきたころのような、ポジティブな「今に見てろ!」が今の彼にはありません。
彼には、「武力を見せつけてのしあがる」以外の立身出世イメージが持てないので、宮廷でどう自分が動いていけばよいのか迷子になっちゃってるんですね。
清盛に対しても「全てにおいて恵まれた貴様とは違う」とか言い出して、清盛に対しての壁をさらに厚くしてしまいます。
■そんな義朝の様子に不安や寂しさをおぼえていると思われる、清盛。
そんなとき、義朝の子・頼朝は、統子内親王(後白河の姉)が女院になるにあたっての宴にて、いまや実力者として上座に座る清盛にお酒を注ぐ役を努めます。しかしド緊張のあまりに注ぐ酒が杯を外れるという粗相をしちゃう。
すみません!と平謝りの頼朝に、清盛は、「いいよいいよ」と優しく…ではなく

「やはり最も強い武士は平氏じゃ! そなたのような弱きものを抱えた源氏とは違う!!」

と言い放ちます。
その言葉に、緊張のあまりあふれた涙を溜めたまま顔を上げ、キッと清盛を睨みつける頼朝。
そうすると、頼朝のまなざしを受け止めた清盛は、ニッと笑みを見せるのでした。
■清盛は、ホントは義朝にも同じ言葉で発奮させたかったんでしょうね。でも、義朝のメンタルはいまやボロボロなので、そんな言葉かけられない。そのやるせなさや怒りを頼朝にぶつけてみた。そしたら、頼朝は立ち向かってきた。それが嬉しくて清盛は笑みで返したのでしょう。
義朝もかわいそうだけど、理解し合えると思ってた相手から「お前とは違うし」と距離を置かれちゃう清盛もまたかわいそうですね。
■そうこうするうちに、重病だった由良にいよいよ臨終のときが訪れます。
なりふりかまわず、数日前に突っぱねたにもかかわらず、清盛に宋の薬をもらいにいこうとする義朝。それを由良はおしとどめて、ここで平家にアタマを下げてはいけないと言い出します。
義朝が源氏のトップとして誇り高く生きる姿をこそ尊敬しているのだ、と、彼女なりの方法で義朝を発奮させようとする由良。死に行く今、彼女は、脆い心がむき出しになっている義朝をそのままに残していくことが、気がかりでしょうがないのでしょう。
もともとは、強引で強気な義朝に由良が片想いするという馴れ初めだったことを考えると、この2人の関係はずいぶん変わりましたね。
平家の薬なんてもらわなくていい、そんなことで平家に頼みごとなんてしなくていいと言う由良に、「お前の命には代えられない!」と言い切る義朝。
由良が心配するとおり、今の義朝は強気を見せる内側に隠し持っていた脆さが前面に出てきている状態です。それを「殿らしくない…」とたしなめつつも、「でも、うれしや…」と涙をこぼす由良。
ここは女性脚本家らしいシーンだと思います。彼女は、義朝のナイーブな本質の伴侶ではなく、武士の棟梁として振舞う外面の伴侶だと自分の役割を決めてたけど、でも面と向かって「何よりも、お前のほうが大事だ」って好きになった人に言われたら。やっぱり、女として嬉しいよね。
由良は、最後の力を振り絞って「誇り高い源氏の妻として、死なせてくれ」と伝えます。彼女の手を握ってボロボロ涙を流す義朝。
その姿に妻として満たされつつも、でも素直になれずに「…と、父が。」と照れ隠しを残すのが、死ぬシーンだからかわいそうではあるんだけど、キュートでした。
■由良はおそらく心配事はあっても、満足して死んでいったと思います。が、残された義朝の絶望は増すばかり。寂しさを癒してほしくて常盤のもとを訪れますが、自分の存在が義朝を弱くして由良の望みの邪魔になってしまうことを恐れる常盤は、義朝を拒みます。



【信頼】
■信西への不満を募らせた信頼は、ついに二条派の公家と結託します。二条派と組んででも、信西を追い落とすほうを選んだのです。
これって、後白河に対する裏切りでもあると思うのですが、信西憎しがメインになっちゃってる信頼にとってはどうでもいいわけです。
信頼の愚痴聞き役になっていた藤原成親も、これにはドン引きしてるのが面白い。のちの鹿ケ谷事件では率先して活動してる成親ですが、この時点ではまだハタチ。巻き込まれる側なんですねー。
■そうして信頼は、義朝にも声をかけます。信西がいるかぎりお前の出世はない、ここで一緒に信西を討てば、権力が望めるぞーと。
この発想はコワいですね。保元の乱が起きるまでの平安貴族には、「目障りだから討ってしまおう」って手段はなかったと思うんですよ。政治的に陥れることはあっても、戦という手段で相手を滅ぼして…という発想はなかった。でも、保元の乱が起きたことで、「それもアリ」になっちゃってるんですよね。
しかも、保元の乱では当事者ではなかった信頼は、その悲惨さはあまり見えてないので、武力行使=お手軽な手段くらいのイメージしかない。
保元の乱に比べると、非常にあっさり、うかつに始まってしまう。タガが外れちゃってる感じが伝わって、コワいと思いました。
■義朝はいったんはビビって辞退します。彼にとっては、戦争はそんなにお手軽なものではないからです。
しかし、息子・頼朝から清盛とのライバル関係について教えてとねだられた義朝は、息子に語りながら、現在のねたみそねみではなく、前に進むために互いを奮起させていた頃の気持ちを思い出します。
かつて、自分を見失ってへたり込んでいた清盛と競べ馬をした頃。
そのときは義朝が勝ち、「次は負けぬ!」と追いすがる清盛を振り返らなかった義朝。そのときの自分の満面の笑みと、頼朝に向けた清盛の笑みは一緒だったのだろう…と正清にも言われて、義朝は我に返ります。
それは、立場が逆転していた…というネガティブな気持ちではなく、「今は、自分の番なのだ」という思いでした。

■義朝のこの気持ち自体は、何も間違っていなかったのです。
「今こそ自分の番だ!自分が清盛の背中にくらいついていくのだ!」と決意したのは良いのだけど、ただ、そこで選んだ行動が悪かった。「武力でなんとかする」以外の方法を選べないのが、この物語の義朝のせつなさですね。
義朝は信頼と組み、信西を討つ道を選んでしまいます。
ちょうどおりしも、清盛たち平家一門は、熊野詣のために京を出てしまったところ。守る者のいない信西に、討手が迫ります…
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by mmkoron | 2012-06-24 16:56 | 大河ドラマ「平清盛」

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