源平観戦日記


第31話「伊豆の流人」

■まずは伊豆でニート暮らしの頼朝。
藤九郎が天真爛漫というか暢気さ全開でお仕えしているようですが、微妙に距離があって噛み合ってないのが笑える。
藤九郎がわわーっと喋るだけしゃべって、ずっとゆるい微笑みをたたえて聴いてた頼朝が「話は終わったか」。「ええ一通り」。この会話好きだ。「義経」のときの安達盛長は、もっとシブい感じでしたから、この軽さは新鮮です。
■そんな頼朝に、監視役の一人である伊藤祐親が尋ねてきます。
頼朝に外出を促すような水を向けますが、頼朝が自分が流人だから…と遠慮するそぶりを見せると、満足したように帰って行きます。頼朝は、別に敵を油断させようとしてるわけでもありません。長い流人生活のなかで、だんだん自分の時代感覚や意志を麻痺させていったみたい。
父や母、そして清盛の思い出も、ぼんやりとしてしまってる。もともと、恨みつらみを糧に怒りで前に進むタイプじゃないんでしょうね。

■全てが朧ろになっている頼朝ですが、一方、京では。
清盛がいよいよ夢に向けて一歩を踏み出そうと、一門の者や兎丸たちにその計画を語っています。
博多のような港を都近くに作るんだと。
そこで宋との貿易をしようというのです。そんな大型船が入れる港なんてこの近くにはない、という兎丸に、「通れるように瀬戸を広げればいい」とあっさり返す清盛。
ドデカイ仕事をあっさり語る清盛に、兎丸一味はおもしろい!とバカウケ。
清盛の息子達もつられて一緒に笑ってますが、重盛ひとりが怪訝というか腑に落ちない表情。反対しているというわけではないけれど、他の貴族たちの反発を懸念しているのです。そして、彼自身が父親が何を目指しているのかはかりかねている。

■さてさて朝廷では。
二条天皇に待望の皇子が誕生しました。のちの六条帝ですな。
ちなみに母親は身分の低い女官です。そのへんは、崇徳の重仁皇子とちょっと重なりますね。歴史は繰り返す…。
二条天皇はもちろん我が子を帝位につける気まんまん。世の中が天皇親政モードになって、なかなか政治の主導権が握れない後白河は、これでますます実権が遠のく予感にイライラしてます。
イライラから救われたいとお経を読むのですが、法華経の「長者窮子」のお話のところの「説是我子」のくだり…これは親が生き別れになってた我が子を指名して、自分の財産を与えるっていう場面なんですけど、それを読みながらキーッとなってその経文を叩きつけます。
「オレは渡したくて渡してるわけじゃないわ!!」ってことですかね。
自分にタテつく二条が政治を思うままにしてるのが許せない…って、「歩み寄らぬのは帝のほうじゃ!」と自分の子どもと同レベルでケンカしてるあたり、いやはや相変わらずです。
そんな後白河に、笑顔で清盛と引き合わせるのは、今は後白河の寵妃となった滋子。彼女は皇子を産んだあと、ちょっとずつ政治家の顔を見せてますね。彼女のこれまでの「私は私の思うがまま生きたい」という思想からすると、家のため親族のためではなく、ただひたすら自分(と我が子)のために政治志向になっているわけで…そっちのほうがコワい。
■後白河は鬱憤晴らしに千体の仏像を作りに作りますが、アタマかくして…というか、その千体を入れるお堂が資金不足で作れないそうな。トホホ。最初にコスト配分しなかったんか。こんなことまで出たとこ任せな性分…。
そこで登場したのが清盛です。清盛は、立派な御堂を寄付します。
大喜びの後白河は、清盛に何がご褒美にほしい? と質問。そこで清盛は、長男重盛を、朝議に参加できる参議に任じてもらったのでした。
後白河は、出来上がった御堂に帝もくればいい!とゴキゲンです。
それにしても、この後白河にとっては信仰もストレス発散や暇つぶしなんですね。。。
■でもね。後白河の人格を見下げている二条帝が、後白河の御堂が立派だからって行くはずがありません。
清盛はそこには触れずに二条帝にまめまめしくお仕えするのですが、重盛がそのへんの空気を読まずに二条帝に「後白河はお父さんなんだし、御堂に行ってはいかがですか?」的なことを言っちゃう。
で、清盛からはめっちゃ怒られちゃうんだけど、重盛はどういうつもりでこんなこと言っちゃったんでしょう。
確かに彼の義兄(妻の兄)は、後白河近臣の藤原成親ですけど、別に奥さんの顔を立てるために言ったわけではないでしょう。このへんの心情は、次の場面に出てくるセリフをもとに解き明かすことにしましょう。
■重盛は、妻の経子に語ります。
かつて父・清盛は、鳥羽院と崇徳院の父子の絆修復のために奔走し、しかし叶わず、一門を守る為に手を汚していった。
このへんのセリフをどう解釈したものか?と思ったんだけど、重盛は、清盛に対して「本心からの願いを堪えて、本意ではないことをしてるんじゃないか?」「それとも変節をヨシとしてるのか?」とその真意をはかりかねているのかなー。
で、本当はこういうことを言ったほうがいいんじゃないか、と彼なりに代弁しようとするんだけど、清盛の意志にはそぐわなくて…って感じですかね。つらいな重盛。
二条帝に子の道を説いちゃった重盛のことを、盛国が「かつての殿のようでしたな」って言って、清盛は「ワシはあのように青臭うはなかった!」と答えるシーンがありましたが、青臭さはどっこいとして、重盛のほうはどこか「こうあるべき」論であって、清盛のような心の底からの主張って感じがしないんですよね。
そのへんは、平家物語とか読んでるときに受ける重盛の印象と重なる。

■うまいこと重盛にポストを与えることができた平家一門ですが、甥である重盛に官位で越されることになった頼盛の周囲は浮かぬ顔。
当人は、保元の乱での自分の身の処し方が悪かったせいだと諦め顔です。
そんな頼盛のもとに知らせが。彼の生母である池禅尼の病が重く、寝込んでしまっているのです。
心配いらないと言いつつも、「いささか疲れた」と弱音を吐く池禅尼。
もう50年も経つ、と振り返る池禅尼。覚悟をして忠盛に嫁ぎ、清盛の母親になると決めてからもう50年…。
「今の平家があるのは、母上のお力があったればこそ。女として、こんなに晴れがましいことはありますまい?」と語りかける頼盛に、彼女は「そう、思っておったのじゃが」と言葉を濁し、ただただ頼盛にすまぬと涙まじりに謝るのでした。
■立派な人間として自分を律して生きようと決めつつも、それを全うできず、頼盛かわいやのホンネがこぼれ落ちてしまう。清盛を憎んでいるわけでも軽んじているわけでもないのだけど、やはり可愛いのは頼盛。
池禅尼のブレ方は、気持ちよい姿ではないけど、人間的ですね。
彼女と、清盛の後妻である時子は似たような立場であるわけですが、時子と重盛との関係はこの先どうなるのかな。ここまで池禅尼のブレを丁寧に描いたら、時子・重盛になんの波風もないのもウソくさくなると思うのですが。しかし深キョンに池禅尼レベルの深みが出せるとも思わないし…うーん、どうなるのやら。

■場所は変わって鎌倉。
めんどいなーとボヤきつつも、頼朝の監視役・伊藤祐親が都の大番役を勤めるため、旅立ちます。
完全に単身赴任のお父さんモード。頼朝への監視を怠るなと注意していきますが、見送る家族の中に、彼の娘である八重姫が…
父親に「帰ってくる頃には、美しく成長しているだろう、楽しみだ!」と言われたので、成長してみせてサプライズしようと思ったのか。
八重姫の下男(侍女じゃなくて男の下人を連れて歩いてるのね。。。)は、都育ちの頼朝に、八重姫のお行儀?指導をしてもらおうと思い立ちます。頼朝が人との接触を避けて暮らしていることをわかっている藤九郎はその依頼を聞き流そうとします。しかし、従者たちがお願いしますいやダメだとやりあっている脇で、ボーイミーツガール。八重姫と頼朝は出会ってしまいました。

■またまた場所が変わって京。このドラマ、場面の切り替えが多いなーと、こうやって感想書いてるとつくづく思うわ。なので、結構時系列を整理しなおしてまるめちゃったりしてるんだけど、それでも多いなぁ。
都では、さぁこれから!という23歳の若さで、二条帝は崩御。しかしなんとしても後白河に政治を任せたくない彼は、「上皇に政をさせてはならぬ!」と叫び、僅か生後半年の我が子に帝位を譲ります。いやいや、それでも赤ちゃんが政治するよりマシだろう、といいたいところですが、このドラマの後白河はそう言えない人格だよな(笑)。
■当時、お葬式ってないと思うので何の儀式なのかわからないのですが、二条帝の成仏を祈る?念仏が響きます。その場に厳粛な面持ちで控えつつ、二条帝の夭折を悼みながらも「しかし、なにごともさだめじゃ」とつぶやく清盛。重盛はハッとして訊き返します。
ここ、清盛が、運命の理不尽さに対して「なんでだ!なんでそうなるんだ!!」と抗い憤ってた若い時代とは違って、いったん受け止める姿勢に変わっているってことなのかな。
■そんなとき、厳粛な儀式をブチ壊す騒音が。
鉦鼓?を打ち鳴らして、後白河ととりまきの僧兵たちのおでましです。相変わらず、こういうとこで自己顕示するのが大好きなのね。
で、ずかずか邸内に上がりこみ、帝の棺があるのか?と思われる方向をじっと見つめる後白河。

「なぜわしの蓮華王院に来なんだ? さすれば(=来ていれば)、千体の観音像がお守りくださったものを」

これを言う表情は、ふっと真剣味のある表情。
露悪的というか愉快犯的に見せているいつもの後白河とは違う、「素」の姿。でも、次の瞬間には「だからこっちから来てやった!」とまたヒャハハ笑い。
このドラマの後白河は、「バカに見せて本当は深い人」じゃないのが、却って面白いですね。
清盛が言うとおり、ただただ自分が中心でないとイヤ、自分が上から見下ろす立場じゃないとイヤ、でも本当は人を引っ張る器量があるわけじゃない。だから、「特別な人」ポジションにいられるように、奇矯な人として胸を張る…そういうキャラですよね。中島敦の世界だと虎になっちゃう(笑)。
最初は後白河のもたらした大騒ぎに清盛も慌て気味でしたが、ここで大騒ぎを威厳で威圧して、毅然と後白河に言い放ちます。
アンタはただの子どもだ。二条帝はそれをよくわかっていたから、最後の力を振り絞ってアンタに実権を渡さなかったんだ!と。
じっと堪えていた清盛が本音をビシッと言う姿に、重盛は感銘を受け、誓います。
父親を信じて支えようと。でも、重盛は清盛の意志とシンクロできてないわけで、目指しているものを共有しきれない状態でその人についてくって、ちょっと辛いよね。
■重盛をシビれさせたこの事件ですが、同時にこの清盛のカミナリを目撃してビビってた人が。宮中の警備のために上洛していた、伊藤祐親です。
「清盛を怒らせるとやばい」。この意識が彼に刷り込まれてしまったのが悲劇の始まりです。
このとき、遠い伊豆では、頼朝と八重姫はすでに心を通わせてしまっていたのです……

■後白河とのいざこざが一段落したころ、池禅尼が子や孫達に囲まれて息を引き取ります。
頼盛にもらした本音とはうってかわって、「なんと満ち足りた人生だったか」と語り、清盛に後を託す池禅尼。しかし、清盛に後事を託しつつも、視線は頼盛の姿をとらえ、「けっして、たやしてはならぬ」と伝えるのでした。
忠正叔父さんといい、このお母さんといい、頼盛の応援をしてるんだか縛り付けてるんだか…って状態ですなぁ。

■とまぁ、今回も、清盛の変化とともに変わっていないところを描いていました。
上司が昔「性格は変えられない。でも習慣は変えられる。」って私を諭してくれたのを思い出すなぁ。。。
清盛も、性格というか本質は変わってないけど、自分で意識的に変えようとしてるんですよね。
あ、そうだそうだ。話は逸れるけど、こんな言葉も聞いたことがあります。
「人は変わらないと言うのは、他人を変えようとした人。
人は変われると言うのは、自分を変えようとした人。」

これも好き。
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by mmkoron | 2012-08-28 01:37 | 大河ドラマ「平清盛」

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