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源平観戦日記


第39話「兎丸無念」

■こないだ、明子役・時子役・上西門院役の女優さんたちが、大河について語るトーク番組がありましたよね。私、録画で見たんですけど、女優同士の関係ってこんなかんじなんだなーといろいろ垣間見えて面白い番組でした。
「私はこういう工夫を演技でしてました(こういうところに注意してました)」「○○さんすごいですねー」「いえいえ」みたいな、形式的すぎるやりとりが。
どうせならもっと熱く「私だったらこうしちゃうと思うんですよ、でも○○さんはこうしたでしょ、そこが!」「いやー、あのときは~と思ったもんで」くらいの内容のあるやり取りが見たかったんだけど、そういうのはカッコ悪いという風潮があるのか、女優同士は手の内を見せないものなのか。。。
ちょっと、同人作家同士のやりとりにも通じると思いました。そこを突き抜けると、ジャンル変わっても仲良しになれるんですけどね。

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■今回の最初は五条大橋の出会いから。
遮那王は、コンサートに遅れちゃう~!と、五条の橋に差し掛かったところで、弁慶と遭遇しました。
「義経」の様式美全開とはまた違って、「2人が出会う」というドラマ性と義経の身体能力の高さ紹介以外は、「さらっと」した描写でしたね。
偶然赤い被衣をしてたせいで、弁慶に禿と間違えられて襲われる遮那王。
戦闘中に禿の一団が2人を取り囲み、そのあと散っていくのはどういう意味なんでしょうね。この2人にいったんロックオンしたよ、ということだけだったのかな。
弁慶VS遮那王は、語りたくってしょうがない弁慶と、さらっと交わす遮那王がおかしかった。
荒い感情と無縁に生きてほしいという常盤の願いどおり、淡白な少年に育ったようです。
遮那王はこの時点では清盛のことを慕ってるんですね。どんな風に、平家を敵と定める「義経」に変化していくのかな。今回は義経主役ではないので、大河「義経」のような清盛との決別シーンまでは用意されないと思いますし。
頼朝決起とともに、楽しみなターニングポイントができました。

■とはいえ、義経のお話はまだまださわりだけ。メインは平家。
今回は、清盛が福原の港を作るお話が、ひとつの結果を迎えます。
たくさんの灯りを神仏に供えるという「万灯会」を大々的に行い、いよいよ港造営に力を入れる清盛。
兎丸はその清盛にせっせと力を貸して働きますが、彼は禿を使った時忠のやり口が気に入らない。禿の活動は厳しさを増し、街角は当然のこと、宮廷の床の下にまで彼らの耳は潜んでいます。
禿を警戒し、清盛の野望の達成形がどうも見えない、とぼやく藤原兼実を黙らせる基房。この人は殿下乗合事件以来すっかりビビっちゃってるようですね。
あと、この2人はしばしばセットで出てきますが、兼実のほうがすこし先を見ている、という視野の違いは結構繰り返し描写されてますな。
■清盛の港造営には、清盛ワルガキ時代の仲間たちも協力してくれています。
兎丸もこの仕事に集中するために、妻子を都にいったん帰らせるほどの力の入れようです。
一方、兎丸は元が孤児ですから、孤児を利用して手足に使う「禿」作戦が許せず、清盛に苦言を呈します。
清盛は、目の前の「悪」をどうにも見過ごせない兎丸をウザがりつつも、でも彼のその人柄を好ましくも思っています。だから、兎丸のいないところで、「自分の目指す世の形は、兎丸が目指す世の形だ」と語ります。
そうなのです。今の時点で、清盛は決してゴールを見誤っているわけではありません。
ただ、皆が皆ゴールを見て生きているわけではない。だから、「方法」「経過」はやはり大切なのです。しかし、彼はそれを他人と共有することに慎重もしくは臆病もしくは軽視であるようです。なぜなんでしょうね。
大きい存在になりすぎた自分に、実は意識が追いついてないのかもしれません。
■清盛は、実力行使で自分の権力を示す一方で、京の一門には、貴族のしきたりを自分たちに取り込むことを命じ、宴や儀礼を頑張らせています。
それを見に来た西行は、清盛の変化に対して、すこし懐疑的になっています。彼が、彼らしくない方法を選び続けることを、性急すぎると感じてるようです。うーん、確かにそうだけど、だったらもうちょい早めに指摘してあげればよかったのに。
西行の不安を聞いた時子は、清盛の意図を測れずとも、彼についていく覚悟を示すのでした。

■で、清盛は福原で港造りです。
ついに宋の地方長官に連絡をつけることができました。実質の貿易ルート確保です。
しかし、何もかも前例重視の宮廷貴族たちは、宋のお偉いさんからの書状について、内容がけしからんといろいろいちゃもんをつけ、交渉を行わないことを決めます。
しかし、貿易で得られる利益に興味がある後白河は、乗り気。相手が地方長官であることを問題にしている宮廷に対して、西光は、後白河の名ではなく清盛の名で外交することでつりあいをとることを進言します。
西光は清盛が嫌いだけど、でも、意味のあることには賛成するっていう方針ですね。この時点では。それなのにどうして清盛と面と向かって敵対することになるのかな。やっぱし滋子の死による影響でしょうか。

■外交の窓口になるお許しを得た清盛としては、三ヵ月後にお忍びでくるという宋の長官に立派な港を見せつけ、清盛こそが日本の実力者であるということを示したい。
そのために、3か月以内での港造営を兎丸たちに命じます。
しかし、無理な突貫工事は作業員の疲労を招き、ついに清盛の旧友・蝉松も負傷してしまいました。それでも3ヶ月というタイムリミットを変えないという清盛に、ついに兎丸はブチ切れます。

兎丸の主張
・港を作るのは、交易で民を潤すためだったはず。港造営で民が苦しむのは本末転倒だ。
・3か月というリミットに、みなの命を危険にさらすほど優先度が高いとは思えない。

清盛
・使者を新しい港で迎えることで、対外的な権力を完璧にできる。
・3ヶ月後は重要なチャンスであり、リスクを負ってでも達成する価値がある。


これ、どっちも間違ってはいないのでしょう。
崇徳への個人的同情を断ち切ったこと、叔父ひとりよりも一門の安泰を選んだこと、一門の財を使って政治的な居場所を手に入れたこと。
清盛は、その場の気持ちよりも先のゴールへの責任感を、「肝心なポイント」を見誤らず選択することで、地位を高めてくることができました。今回もそれを守っているだけです。でも、兎丸はあくまでも現場の人ですから、それに従えないのも当然です。
そこの折り合いをつけながらやっていくしかないのでしょうが…
■そのときに、蝉丸が、「労働力にならない自分を、工事成功祈願の人柱にしてほしい」と申し出ます。
それで清盛様の夢が叶うなら、嬉しいと。
これ、残酷なシーンでしたね。人物同士のすれ違いが…
まばたきもせずにその言葉を聞く清盛のアップが映ります。厳しい表情ですが、目がうるんでいる。
視聴者側は、清盛がいまものすごく自問自答していることを感じる。3ヶ月後に失敗したらやり直しが利かない、と断言した清盛ですが、本当にそれでいいのか?という躊躇がその厳しい表情にあるのではないかと。
でもね、蝉松の言葉を聞いて清盛の表情をうかがう盛国の表情が悲しかった。盛国も、黙ったままの清盛を殴りつけた兎丸も、その清盛の葛藤を推し量ってやれなかった、信じてやれなかったんですね。
■清盛は兎丸に「瑣末なことでこの機会を逃すことはできん!」と言い切ります。
これ、清盛は蝉松たちの命を「瑣末」と言ったんじゃないと思います。彼のさっきの目の表情からすると、目の前の友だちのけなげな言葉に容易く心を動かされてしまう自分の感情を「瑣末」と言ったのでしょう。
でも、そういうのは兎丸に伝わらない。
人の命を「瑣末」と言うのか、と清盛に激昂した兎丸は、清盛が一門の幸福だけのためにこの事業を進めていると判断してしまう。そして、この都造営も、結局盗賊と変わらない、搾取でしかないと吐き捨てて去っていくのです。

■兎丸たちが去ったあと、盛国はかつて朝廷の勝手な命令によって犠牲になった父親の話をし、清盛をたしなめようとします。しかし、それを聞いて清盛の孤独感はますます深まります。
自業自得なんですけどね。自分でちゃんと目標とそれへの手続きを説明してこなかったのだから。
でも、「いちいちいわなくても、わかってくれてるんだと思ってた」ことにしょんぼりする清盛を、責める気にはなれないわ…。

■福原を飛び出した兎丸は、都に戻ってヤケ酒大会です。
そこに駆けつけた妻・桃李は、兎丸の行動をたしなめます。これまでどれだけぶつかっても、清盛がやろうとしていたことを面白いと感じてたから、一緒にやってきたんじゃないか、途中で投げ出してはいけない…と。
その言葉に反論する兎丸。だからこそ腹が立つ、面白いことができたら盗賊扱いで死んだ父親の義を立てることもできる、そう思って協力してきたのに、清盛は結局平家がいい思いをすることしか考えてないのだ!
…と。
兎丸を短慮と責めることもできない。彼は何十年も清盛についてきたんですしね。
ただ、清盛は多分20年先以上の未来を夢見ていて、兎丸は3年後くらいを見てるんです。20年先にも3年先にも生きている人間はいるのだから、どっちも正しい。清盛が、皆とハラを割って話すには一人だけ偉くなりすぎたのがつらいな…。

■そして。
平家への罵詈雑言(今まで仲間だったがゆえの「盛った」発言だったのですが)を探知した禿たちによって、兎丸は惨殺されます。こんな裏稼業はやめてまっとうに生きろ、という兎丸の言葉は、与えられた仕事を無心にこなす子どもたちには届きませんでした。
帰ってこない兎丸を探し、部下達は清盛のもとにやってきます。清盛も一緒になって兎丸を捜す。
兎丸は、五条の橋のたもとに打ち捨てられていました。
禿たちの仕業であることを示す赤い羽に埋もれて、無数の羽(先端が針のようになってる)に刺されて息絶える兎丸を見つけた清盛は、無言で彼に刺さった羽を取り去り、兎丸を抱きしめるのでした。ここ、セリフがなかったのがよかった。
■平家に敵対する勢力を未然に探し出し、封じることを命じたのは清盛です。
命令を発する人間が持つ権力が大きいほど、発した人間には命令のその先は見えません。このケースは命令どおり、このケースは例外、なんてことはできない。
清盛は、こうなるリスクもわかったうえで禿を組織することを許したのでしょうか。多分、自分がそこまでの強い権力を得てしまっていることをここで自覚したのではないでしょうか。

■一門には家族同然ともいえた兎丸の死は、平家に暗い影を落としました。
清盛は一門に、兎丸の葬儀を一門を挙げて盛大に行うことを命じます。
その彼の目の端に、こっそり庭に控える禿たちの姿がうつる。彼らは自分が人の命をあやめたという罪悪感などなく、ただただ命令通りに働いたことを褒めてもらえるという期待に目をキラキラさせています。それだけ、子どもなのです。それだけ、誰にも必要とされずに打ち捨てられていた子どもたちなのです。
この期待のまなざしを見ていられなくて、思わず目をふせる清盛が良い。彼はちゃんと自分が一番悪いとわかっています。
清盛から「禿は始末せよ」と命じられた清盛は、その夜、赤い衣装を炎に投げつけ燃やします。時忠も傷ついている。「じゃあどうすればよかったんだ!」が彼の気持ちでしょう。
■福原でぼんやりと海を眺める清盛に、盛国は問いかけます。清盛が今の方法で夢を目指す限り、同じことは繰り返す。それでも進むのか?と。そして、答えを待たず、進むのなら、命をかけて殿に喰らいついていくと。
静かに涙を浮かべる清盛に、私も貰い泣きしたわー。そして盛国に。
このドラマにおける盛国って、便利に使われてる感じがして、いまひとつ役者の無駄遣いに思えてたんですけど、ここでドラマの盛国が、自分の存在意義を確立するのかな?と感じました。
盛国の最期を思うと、また泣けます。
■清盛は「じゃあどうすればよかったんだ!」とは言いません。彼は誰のせいにもできないのが自分の立場だとわかっています。ただ静かに、結果を己の中に沈め、進みます。
清盛は、今「おもしろい」んですかね。
兎丸が堤防作りのアイディアを持ち込んで、皆でキャッキャ言って模型を作ってたところが最後の「おもしろい」だったんじゃないかな。
この先、清盛は「おもしろい」と信じた過去の自分との約束を果たすかのように、自分にとってはおもしろくないことをし続けねばならないのかもしれません。「おもしろく」なったときに、清盛自身はもういないかもしれないのに。せつないなぁ。
by mmkoron | 2012-10-08 21:12 | 大河ドラマ「平清盛」

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