源平観戦日記


沙羅双樹―平家姫君達の鎮魂歌

大平智也 著/新風社/1890円/1998年発行

■この本はどういうジャンルに入れたら良いのでしょうか。小説? エッセイ??
小説のように人物が創作の会話をしてるのですが、ところどころ筆者の説明が入る形。
敢えて何かに喩えるなら「なよなよした塩野七生」?
■筆者の語りのなかに、しばしば他の作品の引用が出てくるのですが、私でも知ってるような有名な本(『平家後抄』とか、石母田正『平家物語』とか)が多いです。吉屋信子『女人平家』まで巻末の「参考文献」に出てるし。……小説じゃん、『女人平家』って!!
私には商業小説のお約束はわかりませんが、小説を参考文献にした歴史小説って、アリなの…!?
■タイトルを見ると、平家の姫君ごとに章立てされた人物紹介の本のように見えますが、そういう構成ではなく、知盛の妻・治部卿局(この本では「雅子」)の生涯を描く本です。
と、書くと興味が湧きそうです。私も「珍しいなー。治部卿局主役だなんて。」と興味を持ったので読んだのですが、


肝心の治部卿局がどうも好きになれない。


■好みが分かれるのかもしれません。小宰相が死んだときに
「士気が下がるのがわからなかったのか、通盛の血が絶えると思わなかったのか。
自分だけが悲しいと思って。」
と批判。
維盛が死んだときには、地の文に「身の不幸を嘆く維盛に同情し、」とある割に、セリフは
「小松殿一門は公卿よりも勇気がないのね。父上(藤原忠雅)の遠い先祖だって藤原氏興隆のために雄雄しく戦って来たのだわ。」

あんた、それは「同情している」とは言えない。

で、そういう彼女にとって「ダメ」な例を見るたびに、彼女は「自分は生き抜いてみせる」と決意を新たにするのです。
私は中盤から「ヤな女だなこいつ」と思い始め、いったん思い始めたらもう加速して気持ちが離れていくのを止めることができませんでした。
なんていうか、雅子は小宰相たちと同じ苦しみを分け合っている同時代人なのに、雅子の語りに「ニュース見ながら『いじめはいじめられる側にも責任がある』と持論をかます、幸福で平和な視聴者」のような距離感があるように私は感じちゃったのです。
別に「小宰相さま可哀想、維盛さま可哀想、うわーん!」と泣けばいいってわけじゃないんですけど、あまりに雅子の意見が上っ面の正論すぎて、彼女が女を下げてるように思います。そこが残念。
■とはいえ、知盛と雅子の出会いのあたりは、他の本では読めないと思うので貴重ですよ。
かなり知盛が朴訥としてるので、「体育会系のウブな彼と、ワタシ」のようななんとも言えない気恥ずかしさがあります。雅子のほうが若干リードしてるカンジ。

■で、この本なのですが、びっくりするような展開が待ってます。
宮尾本級にビックリの展開のはずなんですが、あまりにさらりとそっちの結末に入っていくので、驚きました。
この本を最初に読んじゃったら、これが史実だと思っちゃうんじゃないだろうか。っつーか、この作者はこれが真実だと信じて書いているのじゃないだろうか。
この作者は知盛の小説も書いていらっしゃるらしいのですが、そっちでも同じ展開になってるのかな。気になる。
■そんなこんなで、期待していた分、点が辛い感想でした。
興味のある方は読んでみてください。…でもあまり流通してないかも。
東京都立の図書館全館で検索してみたのですが、今(05年10月18日)現在
 ・墨田区立図書館
 ・目黒区立図書館
 ・港区立図書館
 ・くにたち図書館
なら置いてるようです。49館を横断検索した結果ですから、かなりレアなのかも。
[PR]
by mmkoron | 2005-10-18 23:02 | 書籍

<< 続群書類従 第19輯上 管絃部      第41話「兄弟絶縁」 >>

源平関連の本・ドラマなどの感想文あれこれ
by mmkoron
S M T W T F S
1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29
最新の記事
カテゴリ
記事ランキング
最新のトラックバック
スキヤキ・ウエスタン ジ..
from 徒然独白 - 手鞠のつぶやき
小栗旬 カリギュラ 関連..
from 小栗旬 画像・動画 最新情報..
小澤 征悦『西郷隆盛』役
from 篤姫(あつひめ)大河ドラマ
リンクなど。
きよもりよりもよき
まみころの平家物語サイト。
あらすじ紹介漫画とか人物紹介など。



まみころのブクログ
源平関連以外の読書日記はここに。読む本にあまり偏りはないと思ってたけど、こうして見るとすごく偏ってる。
以前の記事
その他のジャンル