源平観戦日記


平家物語の虚構と真実〈上〉〈下〉

上横手 雅敬 著/ 塙新書 / 各945円 / 1985年発行

■平家物語に登場する12人について、平家物語のテキストでの言動・人物像と、『玉葉』をはじめとする同時代人の資料を比較し、タイトルどおり何が「虚構」で何が「真実」なのかを検証していく…という本です。
その12人と、筆者の見解を簡単に、私が読んだ印象で書きますと

平清盛…暴虐三昧ではなく、ある意味中世初期の武人像を体現した人物。
平重盛…超保守。清盛が保守な重盛を溺愛しているところが面白い。
源頼政…枯れるのを待つだけの老人ではなかった
文覚…頼朝の野望などお構いなしにわが仏道を行く人
小督…高倉帝ってそれほど純愛一途な人ではない。
源義仲…全編通してハチャメチャ。でもそこがいとしい。
平宗盛…母性を発揮する善人。平家物語では彼の人物像を活かしきれてない。
熊谷直実…結構反体制でロックな人
平重衡…物語にも人々にも愛されまくる人
源義経…色白美青年ではなく、明るい野生児。それでいいじゃないか。
源頼朝…表裏のある人。平家物語は直球で批判してはないが、視線は醒めてる。
建礼門院…うらみつらみよりも、素直に我が子の死を悲しむ、普通の女性だったのでは。

こんなカンジでした。
■重盛のところでは、維盛をはじめとする、小松家の人々にも触れられてます。
この筆者先生は、『玉葉』寿永3年2月の記述や『源平盛衰記』の記述をもとに、「維盛は戦線離脱して投降した」説を採ってました。
同時代人の建礼門院右京大夫が入水説を信じてて、その情報に依拠して資盛と文通してそのまま話が通じてたんだから、投降はないだろうと思ってたんですけど…。
学者先生的にはアリなんですかね? 私は歴史学にはとんと不案内なのでよくわかりませんが…。
そういや、六代についても、「実は斬られてない」説が提唱されてます。
小松贔屓なのかな。他の人物に関する記述は、わりとスタンダードで、別に敢えて異論を提唱する風でもないので、不思議。
■あと、読んでて不思議だったのは、宗盛に関する記述。
維盛や重衡と比較すると非常に冷遇されてる…って書いてあるんですよね。
確かに、カッコよくは描かれてないんだけど、でも私は彼のパーソナリティを物語が否定しているとも思わなかったので、そんなに冷遇されてるかな?と違和感。
宗盛が死んじゃうところ。地の文は結構冷たいんだけど、周りの侍たちが「かわいそうに…」って泣いてる描写があるじゃないですか。平家物語って、いつも最後の最後のところでは、人物を見捨ててないと思うんですよね。
地の文が淡々としてても、読み手にひっかかる仕込みをしてるといいますか。そこが、仏教文学を目指しつつもやっぱり大衆に引っ張られてる、平家物語ならではの愛らしさかと。
そう感じるのは、私がどっぷり文学系だからですかねぇ。

■そのほか面白いのは、やはり清盛についての記述かな。最近の作家が清盛を書くとき、わりと鷹揚な人柄で書かれることが多いのは、こういうトコロから来てるのね、と納得できます。
あと、義経に関する記述も良かった。
腰越状の「百姓に召し使われて働いて…」のくだりに注目してました。私も気になってたところだったので、面白かった!
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by mmkoron | 2006-01-05 23:27 | 書籍

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