たなかかなこ 著/ ヤングジャンプコミックス /各580円/2004年発行(5巻)
■この漫画、いきなりエロシーンから始まりますので、お子様、お嬢様ご注意を。
■牛若丸が男装の美少女です。で、弁慶は女好きで暴れ者な破戒僧なのですが、五条大橋で牛若丸と対峙して彼女に惚れてしまいましてね。「平家を倒したら、『はじめて』をあげる」という約束で家来になるんですよ。
『傭兵ピエール』のピエールとジャンヌダルクなどで見られる、王道シチュエーションですな。
牛若丸がかなりロリコン系の、可愛くてまるっこい美少女なので、好みが分かれるところですね。
■問題は平家です。この漫画、極めて珍しいと思ったのは、
主人公(弁慶と牛若)のライバル役は、なんと重盛!
普通の漫画で知盛がやりそーなポジションに、重盛がいます。
で、教経のよーなポジションに、知盛がいます。
宗盛はダメキャラ扱いです。しょぼん。
■で、重盛なんですけど、
これがかなりカッコいい。
私、正直申しまして、この漫画の重盛はマイベスト重盛になるんじゃないか!?というくらいにカッコいいと思いました。
漫画自体はエロくてバイオレンスなのです。この漫画の平家はそっちの意味での悪逆非道もかなりやらかしてて、そこで憎憎しさが演出されてます。(そこは主に宗盛の出番)
だから、カタキ役の重盛もそっちの意味で黒いのかと思うじゃないですか。でも、違うんですよ。重盛はエロ要素には一切ノータッチ。
「女の牛若丸に重盛がご執心」というようなギャーなシチュエーションもありません。
重盛は、平家の今の支配の仕方に先行き不安をおぼえてて、もっと冷徹な手段での支配を考えてるんですよ。そのために自分の持ち駒がほしくって、寧ろ弁慶を部下にほしいとご執心なのです。あらびっくり。
あと、清盛が重盛にめちゃめちゃ甘いってトコも、私は好きだなぁ。
「清盛は激情家なぶん、目下や弱者に寛大なところがあるが、重盛はそうじゃない」っていうくだりがあって、その人物像は面白いと思いました。この作者先生、めちゃめちゃを描いてるようで、結構平家物語を読み込んだうえでアレンジしてるんじゃないかな。
■そのほかの登場人物ですが、義経&弁慶の子分に「ヨイチ」「ナオ(小次郎という赤ちゃんを連れてる、おじさん。熊谷らしい。)」とかも出てきます。
途中でジャンプの漫画らしく武術大会になったりする(笑)のですが、そこでは源仲綱&木ノ下とか、なかなかシブいキャラも登場してます。常盤と廊の御方とか。
■惜しむらくは、重盛を倒したところで打ち切りになったこと。
重盛もあのまま倒れそうにはないし、知盛もまだ元気だったのになぁ。
『ますらお』といい、源平漫画は完結できない呪いなのかしら。あ、『リョウ』は完結してるか。