源平観戦日記


滝口入道

高山樗牛 著/青空文庫に収録/明治27年発表

■明治浪漫主義の代表作。インテリ青年たちがうっとり読みふけった作品だそうで、「人生は不可解なり」との言葉を遺して華厳の滝からダイブした藤村操青年が愛読してたことでも有名です。
熊野に行く準備してる頃から読みたいなー、でも文語体で読みづらそうだから、後で現代語訳かせめて現代かなづかいにしてる本を買ってこよう…と思ってたんですよ。そしたら、今入手できるレベルでは、もう出版物がほとんどないんですね。なので観念して青空文庫で読みました。
で、その内容ですが…

■後白河院御賀の維盛の「かざす櫻も色失せて、何れを花、何れを人と分たざりけり」という舞姿(ステキだなぁこの表現)から始まり、時頼(滝口入道)の横笛への懸想、すったもんだの末の出家、横笛の死、そして平家都落、維盛の死を描きます。
時頼の結末は『平家物語』とかなり違います。でも、この物語の時頼だったら、そういう風になっちゃうかもなと納得。
平家物語の時頼はもっと枯れたカンジなのですが、この物語の時頼はもっと悟りや感情に揺れがあります。
彼は常に自分の頭のなかでの「あるべき姿」と、実際の自分の衝動のギャップに戸惑い、思い悩みます。で、悩みぬいた結果どうするかというと、えいやっと強制終了みたいな形で解決しようとしちゃうのです。
■横笛への恋心、相手に気があるのかわからない状況での三角関係、親の反対、でも止められない狂気めいた恋心。それを彼は、出家という形の強制終了で乗り切ろうとします。
で、追いかけて来た横笛を、「自分はあるべき自分を取り戻した」という自信のままに突っぱねるわけですが、その「べき論」ではじき返された生身の人間はたまったもんじゃありません。
横笛はかなしい最期を遂げ、滝口入道は動揺します。
■この後に維盛が出てくるわけです。
維盛は横笛リターンズなわけですな。屋島から敵前逃亡し、出家して姿を変えてでもなんとか妻子に会いたいんだと必死な維盛。
滝口入道の「あるべき姿」では、平家の御曹司、あの重盛の嫡子がこの状態というのは、「あってはならない姿」なわけです。滝口入道の精神の強気かげんは、決して宗教的悟りではなく、あくまでも俗世の人間の強気ですから、維盛のこの姿を受け容れられない。
で、滝口入道はまた自分の精神のバランスを保つために、また横笛と同じようにはじき返してしまうのです。
で、はじき返したものの、後で維盛の部屋を見に行って見ると、彼がいない。
滝口入道はもしやと追いかけますが、結局間に合わない。また横笛と同じ結果を迎えてしまったときに、この物語の滝口入道がとった行動というのは…。

■うーん、明治の青年はこの滝口入道に共感したわけですな。私には共感しきれなかったので、この物語が何のテーマを持っているのか、最初よくわからなかった。今の読みが順当なのかも自信がありません。
ただ、滝口入道&維盛の組み合わせはわりと好きだったので、興味深く読みました。維盛入水のあたりって、男ばかり5人くらいいて女っ気全然なくて、それでいてみんなが維盛の精神にするする踏み込んでくるところが、私の潜在的なボーイズラブ心をくすぐるんですよね(大失言)。
■インテリ男子は昔からこころが華奢なんですかね。ちなみに藤村氏が華厳の滝に残した文章はこういうものです。↓

悠々たる哉天壌、遼々たる哉古今、五尺の小躯を以て此大をはからむとす。ホレーショの哲学竟に何等のオーソリチーを値するものぞ。万有の真相は唯一言にしてつくす、曰く「不可解。」われこの恨を懐て煩悩終に死を決す。既に巌頭に立つに及んで、胸中何等の不安あるなし。初めて知る大なる悲観は大なる楽観に一致するを。

精神が衝動の手綱を握れないことに敗北感を感じたり、持て余しちゃいそうな自分を「可愛いやつだわー」「大切にしてやりたい!」と思えないのがインテリ青年なのかなぁ。
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by mmkoron | 2006-02-03 00:14 | 書籍

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