木下順二 著/岩波現代文庫/945円/2003年発行
■「子午線の祀り」の木下氏の本です。ところどころにその話も出てくるので、劇を観に行った人はさらに楽しめるのではないでしょうか。特に「知盛」の章。どの描写からどのセリフが生まれたのかわかって、面白いですよ。
■「俊寛」「義仲」「義経」「知盛」など、人物ごとに章立てしてあります。原文を引用して、そこから作品解釈を深めていくという展開手法ですが、原文に訳がついてないので、先に別の本を読んで情報収集しておいたほうがよいかも。
『吾妻鏡』などの話も持ち出しつつ、論文っぽく記述されているのですが、描写への解釈は劇作家ならではの部分も。知盛が一の谷を逃れるときの、浜辺に残した馬の描写。あの馬の描写は、浜に残してきたものへ心を残す知盛の心そのものだという解釈には、なるほど!と思います。
■内容とは全然別の話題ですが、この本の書体、すごくキレイです。ちょっと細身の明朝。いいなぁ、これ。きれいだなぁ。