源平観戦日記


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愚管抄 全現代語訳

講談社学術文庫/2012年5月発行/税込1,365円

■出るらしいとは聞いてたけど、いつ出るのかよくわかんなくて。本屋さんに別の本を探しに行ったらおいてあったので、買ってきました。こういう本ばかり買ってると感覚が麻痺しがちだけど、1400円の文庫ってすごいよなぁ。この単価の高さって、いったい何部発行なんだろう。よほど小ロットなのか、現代語訳の出版権がものすごい金額なのか…そのへんはよくわからん。
■で、内容なのですが。研究をしてる人のような感想は書けないので、読書感想文的に行きます。
この作品、高校とかの日本史の授業で、「道理」というワードとセットで作品名・作者名を暗記した記憶がありますが、確かに中に何度も何度も「道理」という言葉が出てきます。
起こった事象に対して、「それはそうなる道理があった」≒「歴史のあるべき姿に沿って、そうなるべくしてそうなった」ってなニュアンスで使われているようです。
で、この本では、神武天皇のところからスタートして現在(っていっても、慈円にとっての現在なので、承久の乱のあたり)までの皇統とか大臣の系譜が書かれています。

■さて。これは私のまったくの主観なのですが、私は読んでいて、なんか途中で「道理」と「史実」が逆転してる印象を受けました。
というのも、初期の天皇って、100歳越えとか普通にしてるじゃないですか。さらにそんな天皇に対して大臣が3代に渡って、150年以上仕えてたり。それが淡々と「こういうことがありました」書かれています。
でも、慈円の時代の天皇は、数年で交代するし、100歳の4分の1も生きないで死んじゃう人が続出するわけでしょ。「慈円、本気でこれを信じてるのか~?」って思いますよね。
私も読みながらそう思ってたんですけど、途中で「天皇がころころ変わっている時期(「倭の五王」らへん)があるんだけど、それは、転換期としての道理である」みたいなコメントがされてるのです。
ほかにも、神功皇后のところで「彼女が政治を行う体制を60年も維持したということは、天皇という存在が、血筋より実力で保証されるという道理を示しているのだ」みたいなこともかかれてます。
私は、これを読んで、「この人は、序盤の天皇の記録が、『そうなるように設定されたもの』ってわかってて書いてるんだよな」と納得したのでした。
■序盤の神話のような時代については、彼は、この超設定(笑)がもちろん事実だとは思ってないと感じます。

 道理 → 史実

という矢印の向きで、道理(これはある時期の先達が考えたもの)にあわせて「史実」が設定されてるって考えてるんじゃないかな。
先人が考えた政治の倫理コード(道理)があって、それにかなうように、それを説得できるような「史実」があるのだ、と。
■しかし、後半、つまり慈円の時代に近づくと、彼の論理は

 史実 → 道理

の向きになってて、「いろんな事象が起こるけど、それはよくよく考えるとちゃんと道理に合っている。世の中は道理に沿って動いているんだね。」って因果関係になってる。そんな風に感じました。
どうしてそんな風に感じたかというと…序盤で「道理に合っている」とするときの論拠って、何百年続いたとかそういう「リアリティのない史実」なんだけど、後半ではちゃんと事実としてはっきりしていることを論拠にしてるからだと思います。
序盤は不確かな情報ばかりだから論拠にリアリティがないのは当然なのかもしれないけど。まぁそこは私の個人的な感想です。

■さて。平家物語の世界に関係するあたりの記述についての感想も書きます。
■客観的に、感情を抑制して書かれているけれど、ところどころで個人的感情が出てるところが面白い。基実・基通たちへの書きかたとかね。淡々と事実だけ書けばいいのに、「こんなに仕事のデキないやつって、ほんとそうそういない」みたいな余計なコメントを書き添えちゃってて。言わずにおれないんだろうな(笑)。
あと、忠通が頼長に一時氏長者の座を奪われたことについては、

パパ忠実が、「頼長がどーしてもトップになってみたいって言うから、ちょっとの間だけ、お願い!」って言って来て、忠通が返事をしないでいたら、朱器台盤を奪われた。

って書かれてます。忠実のゴリ押しもあったんだろうと思うけど、でもそもそも忠通にずっと息子が生まれなかったので、頼長を養子にしたんだけど、40過ぎてから息子がボロボロ生まれ始めて…って事情もあるんですよね。その辺はスルー。慈円がそもそも忠通の息子なので、そのへんは書きづらいだろうね。
そんなわけで、南朝プッシュ色前面出しの『神皇正統記』と比べると、「客観的」って言われるけど、でもそうでもないなーという印象でした。
■平家の人たちの話はちょろちょろと出てきます。
清盛のことは、これを読む限りは、大人の仕事をする人というか、バランス重視で仕事をする人って印象。
(いまの大河は間逆だけど、どこかでかわるのかしら)
そのほか、都落ちのくだりで資盛と頼盛が一緒に後白河にアポをとろうとするんだけど、後白河は資盛は無視、頼盛にはこっそり「どこそこでいったん避難しておきなさい。あとで保護してあげるから。」ってなお手紙を出した…って話も入ってます。これ、資盛のことは可愛がってたけど、でも、一門の実権奪われてる小松のしかも次男だから、可愛いだけで利用価値は低い。頼盛のほうは使えるって判断ですよね。
これを賢いって評価もできるんだけど、一緒に言ってきた人に対して、片方切って片方は隠れて保護するってのが、私は性格わる~!って思っちゃう。この、残酷を残酷と思ってない対応の仕方が、イメージどおりではあるんだけど。。。
■あとは、処刑前の重衡を見に行った人が「処刑される人なのに、死相が全然なかったよ」と感想を述べた…という話もあります。ここはそういうことがありました、という記述だけで、それに対する慈円のコメントがないのが残念。

そんなこんなで、
平家物語で起こる出来事を、別の視点から見ていく…というのももちろん面白いですし、これを書こうと思い立った慈円の気持ちとか立場とかを考えながら読むのも面白い作品でした。
読みやすい構成ではないんだけど、一度は読んでみるのをおすすめします。私はもうちょっと時間をおいたら、もう1回読んでみます。こういう情報過多の本って、時間を置いて読むとまた違うことに気づいたりするので。
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by mmkoron | 2012-05-19 08:48 | 書籍


絵で見てわかるはじめての古典7 平家物語

学研教育出版/2012年2月発行/税抜2500円/P.48(本文カラー)

■いきなり本とは関係ないところから話を始めます。私の祖父が、私の叔母たちに小学館かどこかの文学全集を買ってあげてまして。当時1冊600円くらいで、装丁を見るにいまだったらまさにこの本くらいの価格だと思うんですけど、それが30冊くらい祖父の家に残ってたんですね。
で、祖父がなくなってしばらくして、形見分けで私とイトコたちで持ち帰りました。今手元にないのでうろ覚えなんだけど、私が持ち帰ったのは、
 ・「三銃士」とか「愛の妖精」とかが入ってるフランス編
 ・「水滸伝」と「阿Q正伝」が入ってる東洋編
 ・「古事記」と謡曲集みたいなのと「太閤記」が入ってる日本編
 ・「隊長ブーリバ」が入っているソビエト編(当時はまだそういう名称だった…)
 ・ジークフリートとかブリュンヒルデとかの話が入ってる古典編
のあたりで、このラインナップを見ると、非常に自分の趣味嗜好の形成に影響してると感じます。というわけで、「全集」モノって、なるべく上質のやつを(私が読んでた本も、絵とかものすごくきれいだった。古事記の、イザナミとイザナギが二人で海をかきまわしてる絵とか、今でも思い出すもん。)、ちゃんとシリーズで与えるべきだと思うんですよね。偏りなく。

■と、前置きしたところで『絵で見て…』のご紹介です。
言ったそばから7巻目の平家物語だけの紹介なんですけど。
■対象年齢は小学生・中学生です。小学校4年生くらいからだったらいけるかな?

1)時代背景や古典常識がわかる
2)作品のあらすじ・具体的内容がわかる
3)古文のリズムに慣れ親しむ


みたいなテーマが多分あって、それにあわせてページが構成されてます。
読んだ印象だと、「きみが古文を読むときに、傍らにおいてください」ってよりも、古文をまだ読めない子どもであっても古文の世界に親しみをもっておいてほしい…って感じじゃないかな。
なので、「敦盛の最期」とかを古文で読んじゃう中3くらいってよりも、やっぱり小学校高学年のほうがしっくりくる気がします。本文は歴史的かなづかいの部分以外も含めて総ルビです。
■上記1)~3)のうち、思ったよりページを割いてる印象だったのは1)3)です。
平家物語って、誰かひとりに主役を据えるのが難しいから、どうしてもそうなるんだろうなと思います。2)にページ割いてると、きりがない。
前述の世界文学全集を読んでたとき、やっぱ子どものわたしには「太閤記」とか「三銃士」とかのほうが面白いんですよ。「水滸伝」は誰にカーソル当てればいいのかよくわからん感じで。しかも結末がアンハッピーだから、ゴールを目指す積み上げ感もない。そのへんは平家物語も似てますもんね。
■3)は、教科書の指導案とかと連動させてるのかな。平家物語って、多分「古典のリズムを読んで楽しむ」みたいな指導目標のときに出てきますもんね。もとが語りモノなわけだし。
平家物語のフレーズを使ってみよう!のコーナーとか、なかなかほほえましいです。ドッジボールの試合で「遠くは音にも聞き、近くは目にも…」とか(^^
私としてはぜひ

「日頃は何とも思えぬランドセルが、今日は重うなったるぞや…」

とかやってほしかったけど!
■2)も、当時の戦のお作法とか、お馬さんはちっちゃかったとか、鎧が激重だったとか、男の子が興味持ちそうなところを突いて来る感じです。
そうそう、ファッションの六波羅様の話もでてた(でも、脚色されてて、実際の六波羅様の紹介ではなかったっす)。でも、女性の装束の話はなかったですね。多分、女性の装束とか寝殿造とかそのあたりの話は『源氏物語』とかの方で出てくるんでしょうね。

■私が描かせてもらってるのは、2)の中にある、登場人物紹介の部分です。
メインの人物紹介とは別に、「平家物語の中のかっこいい男女を紹介する」ってページがあって、そっちで12人描かせてもらいました。
 重盛/維盛/敦盛/重衡/頼朝/義仲/祗園女御/祇王/小督/静/大納言典侍/巴
でした。重衡&大納言典侍が入ってるけど、私が選んだわけではないです。にんまりしたけど。
人選のコンセプトはわかりません。わりと全編からまんべんなく選ばれてるのかな? 
ポーズとか、あまりマンガマンガした感じでつけないほうがいいのかなと思ったので、立ち姿に変化がないぶん、なるべく衣装をバラけさせようとしてます。どのくらいしっかり考証しなきゃいけないかわからないかったんだけど、カラーだったので、色は普段まったく見ない「重ね辞典」とか見ながら配色してます。ご覧になったときは、「カラー苦手なのによくがんばったね…」と微笑んでいただけると有難いです。
■自分が描かせてもらったので、本全編がわりとマンガマンガした感じなのかな?と思ってたのですけど、ほかのページのイラストは、教材的なタッチのイラストで、いわゆるマンガ・アニメチックな絵ではないです。

つまり、自分のとこだけがオタクくさい…!!

そのへんも、ぬるく微笑んで許していただけると有難いです。自分の絵に対して、華がないというか、マンガとしては地味な絵柄だと思ってきたのですが、こうして見ると、それでもやっぱ十分オタク絵だわ…。
■私は平家物語の巻だけ持ってますが、もしお子さんのために買うなら、全巻もってるほうがいいです。
紹介ページ見てると、5巻「百人一首・短歌」とか、8巻「能・狂言・歌舞伎」とか、あとは9巻「東海道中膝栗毛・江戸のお話」とか、この本の「48Pの中で、カラー図版で古文のエッセンスを紹介する」っていうコンセプトに作品が合うんじゃないかなーと思います。
で、小学校高学年のころはこれを与えといて、中学になったらジュニア向けの古典全集とか渡すと……立派な古典読みを養成できるかも。
漢文版もあるといいですねー。私、今の日本の小説・随想のルーツは日本古典で、論理的文章のルーツは漢文だと勝手につねづね思ってるので、両輪あると面白だろうなって思います。
水滸伝とか三国志演技とか西遊記とからへんってよりも、論語とか韓非子とか唐詩とか史記とか故事成語のモトとか、あのへんの、日本の古典に影響及ぼしてそうなところで。
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by mmkoron | 2012-02-26 02:36 | 書籍


プレジデントMOOK この男、日本を変える 平清盛

プレジデント社 / 2011年12月発行 / 780円

■大河ドラマにちなんだ、清盛関連のムック本はあちこちで発売されてて、あまりに多すぎて買いきれない状態なのですが、これだけぱっと目に留まったので、購入しました。
と、いうのも、いわゆる「いつもの月刊プレジデント執筆メンバー」や、あとは、立川オリオン書房(多摩に住んでたときはお世話になりました…)の書店員・白川さんが清盛関連本紹介してたりと、執筆陣がほかの本と比べて異色。
■で、その「いつもの月刊プレジデント執筆メンバー」というのが、津本陽氏はいいとして、

・会田雄次氏(歴史学者)
・光瀬龍氏(作家)
・武岡淳彦氏(兵法研究家)

…みんな物故者です。目次みてびっくりしました「あれ? まだ存命…じゃないよね…」って。
かつてのプレジデント歴史特集からの再掲載らしい。巻末に「著作権者のかた、ご覧になったら連絡くださいー」みたいなことが書いてあった。連絡とれなくなってるのね…
■記事としては、ドラマのロケのレポートやキャスト紹介は最初のほうだけで、あとは時代背景などの記事です。なので、役者さんたちのインタビューとか期待すると肩すかしかと思います。
時代背景については、
・院政期
・保元の乱
・平治の乱
・平家隆盛期
・後白河との対立
・平家衰退と滅亡
に分けて、各見開き単位で状況を整理してくれてます。ここはライターさんが書いてるので、わかりやすい。
■プレジデントメンバーについては、ご自分の得意分野で語ってらっしゃいます。
私、武岡氏がどんなこと書いてたのか興味あったのですが、あまり具体的な戦術に関する批評ではなかったので、残念。
いろんなことを宗盛の無能に帰してたり、あとは「要所の指揮官が若輩」とか「壇ノ浦で背水の陣を敷く必要はなかった」とか、「なぜそうなっちゃったのか」という経緯への分析ナシで、戦術単独で批評してるとことか、物足りなさを感じました。
いっこだけ、面白かったのは、「平家は船団を持ってたのにそれを輸送にしか使わなかった」ことを平家の弱点として指摘して、水陸両方からの戦術を考えるべきだったというところ。ここをもっと具体的に読みたかったな…10年以上前になくなってるから無理なんですけど。

■そのほかでは、紹介文曰く「歴ッシュ!のあいさつでおなじみの」歴ドルが平泉探訪してる記事もあり。
歴ドルといっても、「静物写真ばかりだと動きが無いので、和装の若い女の子を入れたい」要員って扱いで、歴ドルならではの気の利いたコメントをするとかは一切ありませんでした。
でも、こういう記事を作りたいときに真っ先に声がかかるなら、うまくすきま産業として成立してるなーと感心した。東京からグラビアアイドルつれてくよりも、現地で「ミス平泉」(実在するのかは知らん)とかに依頼したほうが安く済むような気もするけど。

■書店員の白川さんからのオススメ本は、古典・歴史評論・小説などジャンルもさまざまだし、切り口も直球に清盛が題材であるものだけでなく、源氏・朝廷・日宋貿易・西行とバラけさせてセレクトされてました。押し付けがましくないというか、全部読む人がいたときに飽きないように、また1冊だけ読む人にとってはどれかひっかかる本が出るように工夫してる。さすがー!と思いました。
オリオン書房は、トークライブ開催したり、けっこう挑戦的な本屋さんです。私も、「日本文学ふいんき語り」(近代文学をゲーム化する…っていうテーマでゲームデザイナーさんたちが語り合う)トークライブに会社の先輩と二人で行った。

そんなこんなで、ざっと大河ドラマの時代背景を知るには、おすすめです。
ただ、世の中が百人一首ブームだから入ってたんだと思うんですけど、百人一首の紹介記事は「別にこの本に載せなくてもいいんじゃね?」と思った。
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by mmkoron | 2012-01-14 23:38 | 書籍


じつは面白かった『平家物語』

小林賢章監修 / PHP文庫 / 2012年1月発行 / 629円

発売日に見本誌をいただいたので、ご紹介を…。
イラストだけですが自分も参加させてもらった本だと、ちょっと思い入れ入って公正にならないかなと心配しつつも。

■見本誌を見て、真っ先に思ったのが「思ったよりも、オタク向けなのか…!?」という感想でした。
私、PHPの歴史系の文庫本というと、「●●に学ぶリーダー論」みたいなののイメージが強かったのです。
初見のかたは、タイトルや表紙の雰囲気、キャラ(ビワッキーくん)がナビゲートするという構成で、かなりライトな本を想像されると思います。が、中身は予想以上に手堅い

■構成は、次のようになってます。
1)『平家物語』を1巻あたり2章くらいに分けて、あらすじ紹介
2)主要人物紹介
3)合間合間にコラム

前提として押さえておきたいのは、1)はあくまでも『平家物語』の紹介だということ。
ですので、史実ではなく物語のストーリーラインに沿ってます。1)に無闇に史実を混ぜなかったのは、わかりやすくていいと思う。2)で史実との違いの話が出てきます。

■1)についてですが、巻一~巻十二まで均等に分けて紹介されてるので、印象としてはかなり詳細です。
「カンタンに平家物語がわかる!」系の本だとすっとばされがちな巻二あたりもきっちり入ってるし。
六代被斬(ここって、三国志における「五丈原の後」みたいなもんだと思う。)のあたりも詳細。
合間に、人物関係図とか、戦闘方法の図示とか舞台になった地域の写真とかが入って、イメージしやすくなってます。
■2)は、人選は『平家物語』での出番インパクトによるものと思われます。
なので、妹尾兼康とかが六波羅平家一門の主要メンバーと一緒に出てる一方で、平頼盛のように史実(この言葉あんまり好きじゃないけど)としてはかなりキーパーソンだけど『平家物語』で影が薄い…という人はとり上げられてません。
このコーナーでは、他の文献に書かれていることと、『平家物語』ではデフォルメされて「お話として面白いように」描かれてることとの差異も含めて、人物像や最期が紹介されてます。
全員にイラスト入ってるのがすごい。指定がそうなってたのか、絵を描かれた方が調べて描かれているのか、物語のどこから持ってきたかわかるポーズになってるケースも多くて、面白いです。
個性が際立つ感じなので、「結局みな同じ顔やん」的な「捨てカット」状態ではない。
紹介文は、楽屋オチっぽいツッコミではなく、印象としてはカルチャースクールで大学の先生が語ってくれてるような、丁寧で易しい語り口です。
■3)は
・巻頭に入ってるみどころダイジェスト
・「人物対決」のおたのしみコラム
・原文ピックアップして、調子を楽しむコーナー
・その章段にちなんだ漫画(ここに私の描いたのを使ってもらいました。ありがたや…。)
・平家物語好きの後世の有名人(芭蕉とか世阿弥とか)とその作品…など、マメ知識
で、飽きないようにいろいろ箸休め的に入ってます。
成立背景とか、文章のリズムを楽しむとか、国文で平家勉強するときの鉄板分野がさらっと入ってるのも、やっぱり手堅い。

■…というわけで、
学校で●●最期系の章段をやった記憶くらいしか、『平家物語』に触れたことがない人」向け
で、そういう人が
学校でやった以外の物語全体がどうなっているかを知って、主要な人物については物語での描かれ方だけでなく実像にも興味が持てて、イラストや写真をふんだんに載せることで、文字面を追うだけでなくイメージができるようになる
のを目指す本なんだなーというのがわかるつくりです。
ほんと、使われているイラストとかのタッチはイマドキ風(※自分の絵は画風を語る以前のレベルなので、除く)で、オタクっぽくも見えるんだけど、中身にオタクっぽい突っ込みや演出がなく、手堅い。
『平家物語』読み込んでる人は、知っている内容の整理だと思うので、目新しい情報が得られるわけではないですが、うろ覚えだったらおすすめだと思います。
…むしろ私の漫画が唯一の「おたくっぽい突っ込み」要素って感じですね、ぎゃふん。

■最後に…。タイトルは「は」が「に」だったほうが、平家物語大好きな私にとっては、好みだったかも。
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by mmkoron | 2012-01-14 04:24 | 書籍


NHK大河ドラマストーリー『平清盛』 前編

NHK出版/1100円/2011年12月初版発行

■1月8日の放送開始に向けて発売されました、毎年恒例のガイド本です。今年も「江」のとき同様の3冊構成になるそうです。「義経」のときは2冊、それよりもっと前…「太平記」とかのときは1冊だったんですけど、今後は3冊で定着してくんですかね。
■内容はこれまた毎年恒例で「出演者インタビュー」「出演者対談」「考証や時代背景の紹介」「ノベル形式で、前半のストーリーダイジェスト」がメインです。では、各コーナーの感想を。

1)出演者紹介&インタビュー
■インタビュー記事が入っているのは、清盛・義朝・後白河・西行・時子・明子・宗子・家貞・頼朝・政子・為義・由良御前・常盤・鳥羽・待賢門院・美福門院・堀河局・祇園女御・忠実・頼長・信西・兎丸・盛国・白河・忠盛で、あとの人は写真と人物紹介のみです。
■インタビューを見て、おっ、と思ったのは、後白河と頼長と信西。
後白河については、わたし正直役者さんの演技力をあまり信頼してなかったので、「不思議ちゃんキャラ」で演じるのかしらって思ってたんです。でも、その場の欲求に率直な人として演じるつもり…ってなことが書いてあって、ちょっと期待。「義経」のときの、バケモノとバカモノのはざまにいるチャーミングな後白河とはまた違う姿を見られるといいな。
あと、頼長は、思ったよりも敵役として実力があるという描かれ方をするようで、そこは嬉しい。頼長は絶対清盛たち武士と馴れ合ってほしくないと思ってたから(笑)。
一方で、信西は清盛の先生っぽくなるというか、清盛とだんだん距離を縮めてくようですね。信西って、ほんと実力と努力に見合った結果が得られない、ついてない人だと思ってたので、彼がドラマで魅力的に描かれそうなのがうれしいなぁ。
■インタビューを見て、これは意外とキーキャラになるのかな?と思ったのは、鳥羽院。
心情が丁寧に描かれそうですね。インタビュー読んでると、宮廷側の役者さんたちは、当時の宮廷の「どーしよーもない」感じを表現していくプランのようです。こういうのって、演者が意識的にやりすぎると「宮廷がダメだから武士が立ち上がりました」みたいな単純ストーリーになりそうだと思うんです。
でも、鳥羽院がどれだけ悩みを真摯に演じられるかで宮廷サイドの深みが増して、印象が変わりそう。ここも見どころだなー。
■あと、清盛の継母になる宗子にも注目したいです。単純な継子モノではない関係のようですね。

2)出演者インタビュー
■忠盛・清盛 & 為義・義朝の源平父子4人の対談です。
■為義がかなりトホホな描かれ方になるっぽいので、源氏ファンは嫌だなって思う人もいるかもなぁ。でも、「自分が泥かぶっても息子をなんとか…という切ない親心」らしいので、これはTVの前のお父さんをキュンとさせるのかも(^^
義朝が親心を解せずに「うちのお父さん、情けないな」ってちょっと軽んじてるってのは面白いと思う。保元の乱の後でざーざー泣きそうだなこれは…。

3)時代背景&考証
■よく大河ドラマの考証をされてる高橋昌明先生が、「武士の政治っていっても、武勇だけでなく文治にも注目し、さらに清盛の先見性にも注目してほしいな」って話をされてます。
が、ちょっと見開き2Pで語るには内容盛りだくさんなので、前提となる知識がないと「結局何の話なのかよーわからん」になってるかも。インタビュアーの腕の問題ですな…。
ちょっとひっかかったのは、「貴族っていうと政治に無関心で遊んでばかり…って思うかもしれないけど、実際は今の蔵人頭が半月泊まり込みで仕事してたり、結構仕事してるんだよ」ってくだり。
でも、仕事をどれだけちゃんとやってるかは、残業時間ではかるものじゃないんだよなぁ…なーんて、サラリーマンの私はちょっと思っちゃったのでした。「だらだら残業が慢性化してたんなら、平安の最後のほうはそれこそ組織的に末期だったのかもな。」とはいえるのかもしれない。
■心うきうきしたのは、海賊船の製作工程。これ、私NHK広島製作の特番を見て胸ふるえたんですけど、文字で見ても面白かった。特番では言及されてなかった、TVで魅力的に見せるために、実際の当時の船と比べてどこをどうアレンジしたかって話が書かれているのは、興味深かったです。

4)ストーリーダイジェスト
■序盤の展開がわかります。忠盛が死んじゃうところまでなので、保元の乱にも突入してません。
■待賢門院関連が、想像以上に昼メロというか、ベッタベタにドロドロ展開のようです。なんというか、「セカンドバージン」層を大河に呼び込めそう(笑)。
私、大映ドラマとかもめっちゃ好きなので、ちょっと楽しみ。
■特筆すべきは、頼長の男色描写が出てくることでしょうか。新平家では出てなかったですよね。(「草燃える」以来か?)
で、相手が…。なるほどー!と私すごい感心した。そうやって、摂関家の争いと清盛を関連付けるのかー!と。保元の乱あたりって、うまく巻き込みをやらないと、上層部の争いと清盛たちがうまく絡まないというか(当然利害は関連しあうけど、そうじゃなくて、人物の心情が絡まない)、それぞれ別々でやってる感じになりそうだなって思ったんですよ。
私、「新平家」の総集編見てたときに、その「別々」感をつよく感じたのです。
実際はこの時点での清盛たちの立ち位置はそのくらいなのかもしれないけど、45分のドラマ10回程度のなかで見せようとおもったら、面白くないわけで。どう捌くのかなー?って思ってたから、「そうきたか!」と膝をうつ気分です。
実際役者さんたちがどう演じてくのか、楽しみー!

…とまぁ、そんな内容です。あと、巻末のPR記事で、広島の呉で上記の大河用海賊船が展示されてるという記事発見。うわーすごく見たい! 絶対行く!!
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by mmkoron | 2011-12-30 23:35 | 書籍


平家物語絵巻

林原美術館刊/円/2004年初版発行/2400円(すみません、うろおぼえ…)

■林原美術館というのは、岡山にある私立美術館です。トレハロースのハヤシバラですね。
戦後のドタバタの時期に池田のお殿様からたくさんお宝を購入していて、それを林原美術館に所蔵しています。その中に平家物語絵巻もあるんですよ。
皆さんご存知のようにちょい前に経営破綻してしまいましたよね。あわててこの画集は買わねばー!と出かけました。
■この本、A4横版なので決して大きな本ではないのですが、忠盛殿上から壇ノ浦、女院往生までの絵巻がきれいに揃っているので、見ごたえあります。解説もしっかりついてるので、どの部分がどの場面か照合させやすいですし、価格に対してコストパフォーマンス高いと思う。
■ここで私が特に印象に残ってる部分について。

○新大納言死去 
…成親の串刺しシーンが結構えぐい。
○御産 
…きらびやか~です。こんなにぎやかな場所で出産するほうも大変だわ…という気分になる。
…重衡の着物の柄が派手なのが気になる。えーんって泣いてる清盛がキュート。
○維盛都落
…袿姿の女性(たぶん新大納言局)が立ってます。立ち姿って珍しい。
○首渡
…えーっ、こんな風に首って引き廻すの!?と。今まであまり方法って考えたことなかったから。
○維盛入水
…入水してる背景で、普通に漁師さんが漁してるんですよ。なんかそこが切ない。

■ハヤシバラは無事引き取り手の企業が見つかったわけですが、メセナ事業がどうなるかは2011年夏の時点では結論が出てません。気になる方はいまのうちに観にいっておいたほうがいいかも。
ちなみに、池田家の家紋が蝶だそうで、蝶柄のグッズ(クリアファイルとか一筆箋とか)が豊富なのも平家好きにはおいしいっすよ。
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by mmkoron | 2011-08-29 00:28 | 書籍


中世日記紀行文学全評釈集成 第二巻 たまきはる

収録作品:たまきはる(大倉比呂志) うたたね(村田紀子) 十六夜日記・信生法師集(祐野隆三)/勉誠出版/13650円/2004年初版発行

■勿論ここは源平サイトですから、目的は『たまきはる』だったわけですが、十六夜日記の解説が面白かった。ありていに言うと「どうしてこの作品が微妙に残念なのか」を解説してる。
読んでると身につまされます。私、もし800年後に自分の作品について、この本の解説のように「おそらくこの作者も、書きながら軸ブレブレだなーと気づいたと思われる。だから、最後にとってつけたように、無理めにエピローグを描いたのだ。」みたいなこと書かれたら、草葉の陰で泣きますよ…。
■で、本題の『たまきはる』です。別名『建春門院中納言日記』。
平滋子に仕えた、健御前(藤原定家の姉)の日記です。日記と言っても、別に毎日まめまめしく書いてるわけではなく、「私の女房生活の思い出ベスト10」的にかなり軽重ついてます。いきなり6年後とかになってるし。
えらく具体的なところと、さっくり流してるところとのギャップがあるのですが、作者が12歳で初出仕したときの、滋子を初めて見るシーンはとっても鮮やかです。
あと、年取ってから仕えた年若いお姫様・春華門院を病気で亡くすあたりの描写も。この二人に仕えたことが作者の誇りなんだろうなーとよくわかる。
■解説にもかかれてましたけど、恋愛とか家族とかの話題はなくて、ひたすら「仕事日記」なんですよね。仕事での人間関係には言及されてるけど、それ以外の話は書かれてません。
滋子に目をかけられて育ててもらった少女時代と、掌中の珠のように内親王を慈しみ育てた晩年。間がかなり端折られてるのは残念だけど、一人の女性のキャリアの変遷として面白いです。
もっと遊びの部分もあったほうが文学としては面白みがあったんだと思うけど、「そもそも書きたかったことから外れることは書かんでいい」とする、そこは性格なんだろうなー。
健御前は春華門院の養育をめぐって他の女房と対立して、第一線を退いた(でも折に触れて春華門院とはやりとりしてた)らしいのですが、日記の無駄の無さやだらだらっとした人物評がないところは、確かに気強い性格だろうなって感じします。
「三河」っていう、仕事干されて退職した女房(元は滋子のお気に入り)の話とか、出てくるんだけど、どうして仕事干されちゃったのかとか、そういう話は書かないんですよねー。それが読みたいのに(笑)。
■作者の健御前は、定家の同母姉。この日記では自分のプライベートな情報はあまり出てこないのですが、定家の日記『明月記』にちょくちょく登場するらしいので、今度はそっちを見てみようと思います。
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by mmkoron | 2011-04-05 00:49 | 書籍


五上楽 平家公達徒然

井上嘉子 著/シースペース/1050円/2008年発行

■平家公達+高倉帝の9人をセレクト。「平家公達草紙」「平家物語」を中心に、「建礼門院右京大夫集」「たまきはる」も絡めつつエピソードを紹介する形式の本です。amazonでは「公達草紙」の訳本のようにも取れる紹介文になってますけど、他を典拠にしてる箇所もかなり多いです。目次立ても公達草紙とは違うので、ストレートな訳本だとは思わないほうがいいですね。原文+訳+筆者のコメント の構成なのが、わかりやすい。
amazonで注文したんですけど、本の体裁が思ってたのと違って意外でした。教科書みたいな体裁です。A5で、前後が糊付け見返しという…。
この出版元は、一般書籍の出版社というよりも広告代理店的な会社のようですね。奥付に著者略歴がないから、この手の本にしては不思議な感じがしたんだけど、自分が普段から興味があった分野で本を作ってみた…という自費出版に近い形式なのかも。
■9人(建春門院も見出しになってるから10人か)出てきますが、記事の量としては

重衡=維盛=資盛>>>>>>>>>その他

です。あと、公達草紙の書き手である藤原隆房は、もちろんこの本の中ではかなり存在感あります。
内容的には、新書とかでときどきある、古典の人物紹介モノです。
しかし、この本を平家物語をほとんど知らない人がわざわざ手に取ったり注文する可能性は低いわけなので、もっと突っ込んだ情報を入れたり、この著者の人物への解釈を突っ込んで語ったりしたほうが、本の個性が出たんじゃないかなー。
■人物の解釈といえば…。
さらっと流されてるのが非常に惜しかったのですが、隆房の維盛との関係のところが、この本最大のポイント。

「隆房→(はあと)→維盛」の観点は私にはなかった…!!

根拠となっているのは、公達草紙に出てくる、「隆房が恋人の家からの帰り道、あるところでこれまたどこぞの家からこっそり出てくる維盛を見かけた」という話です。カンタンに説明しますと、

・維盛が出てきた家には、久我内大臣(源雅通。1175年死去。九条兼実の政敵になった源通親のお父さん。)の娘が住んでる。
・この娘、二条天皇のころに入内をなんども要請されてた美女。隆房は「いまさら誰が想いをかけてるんだろう」と思う。
※二条天皇は1165年には崩御してるから、当時彼女が15歳くらいだったとしても、この物語時点(1170年代後半か)では20代後半。ちなみに維盛は1175時点では17とかそこら。
・その日はずっとショックで「いつからだったんだろう。しょんぼり。」と思って一日を終えた。
・翌朝、維盛が住む小松殿へ行ってみた。が、留守だったので勝手に彼の部屋に行く。
・机の上に書きかけの手紙があって、どうやらそれによると昨晩、例の女性と初めて契ったらしい。
・隆房の反応=「くちをしと言えばおろかなり。とりあへず涙もこぼれぬ。」
・そのあと維盛帰宅。なじってみたが、ツンととぼけられた。
・維盛の姿をまじまじ見て、「まぁ、こんだけカッコよかったら、女はほっとかないよね」と思うものの、約束やぶりは恨めしい。
・バレないようなことなのに、それがわかってしまったのは、いつも心こがれてるからだ…と隆房は思うのでした。

こんな流れ。流し読みしてるときは全然思わなかったんだけど、こうしてまとめてみて気づく。


た、たしかにこれはアヤシイ…!!


この本の筆者の解釈を見る前は、読みながら勝手に

・「久我大納言の娘」というのは、風流な女房として他の昇段でも出てくるから、同一人物かな。
・彼女は高嶺の花・マドンナ的立場だったんじゃないか。
・男子共は、「久我っちハアハア(´Д`;)」で、互いに暗黙のうちに不可侵条約を結んでた。
・なのに維盛ときたら!約束破られたのが恨めしい!
・そりゃ維盛が本気出したら俺らじゃ勝てないよ…と隆房ハートブレイク。

なのかと思ってました。でも確かに、久我さんちの娘に対しては
「今さらにとておぼしもかけざりけむものを、いかなる好き事かあらむ」
という表現なんですよね。
どちらかっつーと「今さら俺らのマドンナに、どこの好き物が!(怒)」ってよりも「往年のマドンナに、今さらどこの物好きが…」に近い気がしてきた。じゃあターゲットは、久我ちゃんではなく、維盛か!

・維盛が年上女にひっかかったなんて。いつからだったんだろう。しょんぼり。
 (自分も三十路近いくせに、女のことは年増扱い。)
・翌朝、維盛が住む小松殿へ行ってみた。が、留守だったので勝手に彼の部屋に行く。
・机の上に書きかけの手紙があって、どうやらそれによると昨晩、あの女性と初めて契ったらしい。
・悔しいなんて言葉にもしてられないくらいショック。涙があふれちゃう。
・そのあと維盛帰宅。詰ってみたが、ツンととぼけられた。
・維盛くらいカッコよかったら、女はほっとかないよね。それはわかるけど、約束やぶりは恨めしい。
・維盛も隠れて付き合ってたんだからそうそうバレないことなのに、それを発見してしまったのは、いつも彼のことを想い焦がれてるからだと思う(ぎゃー)。

ってことですか。隆房、乙女すぎるだろ。
そして。じゃあ、「約束やぶりが恨めしい」の「約束」って…

      ・
      ・
      ・
      ・
うわぁぁぁぁぁぁ。


■隆房もアイドルを汚された気分だったんだろうけど、わたしも同じ気分ですよ…。
(ところで維盛といい、資盛といい、年上女好きですね。資盛は右京大夫に対する態度からすると背伸び気質っぽいけど、維盛は怒るとたびたび拗ねモードに入ってるので甘え気質っぽいイメージが。………いいじゃないか、これくらいは夢を見たままにさせてくれ…。)
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by mmkoron | 2009-06-14 20:01 | 書籍


新訂 官職要解

和田英松著/講談社学術文庫/1350円/1983年初版発行(文庫版)

■私が通っている歯医者さんは予約したはずの時間からえらく待たせるので(30分以上待つの普通なんですかね…しかもベッドに寝転んだあともまた30分とか待つの…もうやだ…T_T)、その間に本でも読もうと思って購入しました。
上代、中古~中世、近世の官制について説明している本で、職掌の説明→役職の説明が基本の構成です。書き方が「一覧」っぽい紋切り型ではなく、語り調なので、調べ物本としてでなく読書しても面白いです。もちろん、調べ物にも活躍すると思いますよ。索引ついてるし!
ここでは上代・近世の話は置いておいて、中古の内容をご紹介します。
■いやー、私、こういうのって全然知識なくって、なんとなく想像して描いてただけだったので、官職同士の違いとか、当時の人のその職へのイメージとかを、文献を根拠に説明されていると、すごくためになります。
大納言と中納言の話とか、面白いです。
もともとは大納言の定員は4人で、それを2人に減員したんだそうです。その影響で元々は無かった「中納言」っていう役職をつくったらしいのですが、宇多天皇の時期あたりから「権大納言」の数がポコポコ増えて、結局「中納言~大納言」にあたる人が18人とかになったんだそうで。
権大納言作ったときに中納言を廃しちゃえばよかったのに、うっかりそのままにしたから、管理職だらけになっちゃったわけですね。

うわー、いかにもありそうな話…!!

なんか、こういうのって昔から変わらないんだなー(^^;
■私が持ったイメージは、正四位のラインから上がいわゆる「政治家」ですね。仕事内容の説明を見てると、このへんは要するに、人脈作って話を聞いて会議して決定するのが仕事なんだなーと。うんうん、だからパーティー三昧なんだ(笑)。
そう思うと、大納言だ中納言だ参議だとやたら数が増えていったのって、自分の仲間の数を増やして多数派になる作戦だったのかなーと思います。
一方、その下は、わりと「公務員」に近い気がします。やることがわりと具体的に明確に決まってます。「庶務」にあたる部署がやたら多い印象はありますが。
その後は、六位のラインでキッパリ俸禄が違います。源氏物語で夕霧のスタート地点が六位だったかと思うのですが、確かにこれはガッカリかもなぁ。
最盛期の平家子息たちの多くが五位以上スタートだったのも納得。
■そんなわけで、文官の四位以上は、正直「パーティーと会議するのが仕事」状態のようなので、みんなが具体的に「やること」がある武官の職を、兼任でほしがったのはわかる気がします。平家物語でも「大将」大人気ですよね。やりがい云々よりも、具体的な権力を持ちたいってのもあるだろうけど。
維盛や重衡たちの「近衛権中将」は内裏の警護なのでSPみたいなもん。清宗の「衛門督」は官公庁街の警護みたいなもんですかね。やっぱり近衛のほうが花形だったそうです。
宗盛もそこは流石に遠慮したんだなぁ(笑)。
頼朝「兵衛佐」の兵衛府はちょうど衛門府の領域と近衛府領域の間にあたるところを警護していたそうで。……えっ、狭っ。
この本で「近衛は内、兵衛は中、衛門は外の警護」と説明されてて、すんなり納得しかけたのですが、いやまて「中」はきっとその両側と仕事かぶってるよ!
近衛府が後でできた部署らしいので、これも「なんだか残っちゃった役職シリーズ」なのかもしれませんね。

■社会人のかたは、自分の知っている職掌や役職に当てはめながらイメージしてくと、結構面白いと思います。やたら「●●補佐」に近しい役職名がバリエーション豊富なのも、なんか今でもそうだよなーと興味深いです。
今でもわけわかんないですよね。課長補佐とサブリーダーとか副課長とか課長代理とかアシスタントマネージャーとか!!
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by mmkoron | 2008-09-22 23:56 | 書籍


後白河院

井上靖著 / 新潮文庫 / 420円 / 改装版2007年発行(初版は1972年発行)

■とらえどころのない平安末期の大天狗・後白河院を4人の人物の視点から照射した短編です。この4人というのがまた通好みというか。
 ・平信範(『兵範記』作者)
 ・建春門院中納言(『たまきはる』作者)
 ・吉田経房(『吉記』作者)
 ・九条兼実(『玉葉』作者)
の4人です。一番有名なのが兼実さんだなんて、なんてマニアックな選出。
しかし読み始めると、これが絶妙な4人だなーとわかるのです。
■まず、トップバッターの信範さん。
彼が、平家上り調子の頃、ちょうど藤原基通基実(ごめんなさい。息子の名前書いちゃってました。修正します。ご指摘ありがとうございました!)が死去した頃に、兼実に対面して昔語りを話して聞かせる…という形式で話が進みます。保元・平治の乱あたりの時期の担当ってわけですね。
彼は院の傍近くにべったり仕えてたわけではないので、あくまでも藤原忠通の家司としての立場で、忠通の話をしてます。忠通が弟である頼長に勝利する過程に、後白河の話が出てくるという形です。
信範さんは立場上、忠通とその血筋万歳・全肯定な発言連発キャラだったので、そのムズ痒さも面白いです。兄である藤原基通基実が死んじゃって、弟のあなた様もどんなに悲しいでしょう?と語りかけるあたりは、これは空気読めてないのか、キツい皮肉なのかどっちなんだ…と思ったり(^^;)
彼の語りの中に院の姿はほとんど出てこないですが、当初ノーマークだった後白河がひょっこり話の中に出てくる様子は、実際そんな感じだったのかもなと思わせます。
信範の数少ない後白河との接触のなかで、印象に残ってるのは甲高くて邪気のない笑い声と、自信に満ち溢れた信西の横顔を無表情で見つめる目。
信西は結局自死することになるが、その最期まで後白河のあの目に気づかなかったんだろう、と観察者の家に生まれた人間ならではの洞察を述べつつ、彼のパートは終わります。

■次は、建春門院平滋子に仕えた女房、中納言の語り。
この語りの時期は、鹿ケ谷の陰謀が露見し、その後、徳子が安徳天皇を出産した頃です。
彼女もまた院の話をするというより、建春門院の栄華と死を語ります。
これがいっときの栄華であるとわかっていて、まるで自分で幕引きまでしていったようだと語られる建春門院。四季の花々にみなが恐縮するほど慈しみを与えるくせに、ちょっと鼻につくととたんに見向きもしなくなったという後白河院。
建春門院が、あざやかに華やかでいながら、けれどどこかうつろな寂しさを感じさせたのは、それがわかっていたからなのだろうと匂わせつつ、彼女は話を終えます。
最初のパートは兼実が聴き手ですが、ここは誰が聴き手なのかわかりません。

■3番手は、吉田経房。
二心の無い忠勤に励む官僚として評価され、反発心からなのか義侠心からなのか、壇ノ浦後には維盛妻(新大納言)を妻に迎えた人です。
この人は後白河に対して全肯定。院に対して批判的な兼実を嫌っている発言が出てきます。第1部(平信範)とギャップがあって面白い。
後白河に対しての「あっちに靡き、こっちに靡きしている」という批判に対して、そういう批判をする輩は院のご深慮がわかってないんだとキッパリ反論。のらりくらりとしてるという批判に対しても、それは慎重さなんだと反論してます。
けれど、そんな経房も院に対してどこか不安を抱えてます。語りの頃は、ちょうど義経と頼朝の対立が表面化してきた頃。義仲のときとは違って、院はこの二人を争わせるお心はないはずだ、だって院は義経のことは気に入っているのだから…と言いながらも確信を持てないまま、経房の語りは終わります。
この語りが終始ガチガチに硬くって、経房のキャラが出てて面白かった(^^

■4番手は満を持して登場、九条兼実。
彼の語りは、院もすでに亡く、兼実自身も失脚した、その頃です。
まつりごとに関与する望みも絶たれ、虚脱状態ですっかり毒の抜けた兼実が語る口調もまた面白い。
後白河院に批判的だった彼は、ここにきて、自分の院への評価がズレていたことを認めます。院はのらりくらりと態度を変える中途半端な人物などではなかったと。
彼は終始変わっておらず、ただまわりが院を窺いながら態度を変えていただけ。院はそれらの相手にてきとうな返事をしてただけなんだと。
院は敵味方の間をうろうろしてたわけでもない。彼にとっては全員が敵だった。
それが兼実が行き着いた結論でした。
そして、兼実は自分自身に対しても「娘を中宮にしたい、という気持ちがある」限り、院にとっては敵でしかなかったのだろうと認めます。
そんな兼実が、若き日に信範に聞いた昔話のことで、一番よく憶えていたのは信西のくだり。
あれだけ根性据わってる信西が、どうしてあっさり自死したのか。
それは、自分の死を願っているのが、敵方である藤原信頼だけではないことに気づいた、その絶望ゆえだと兼実は語ります。自分が何のために情熱を傾けていたのか、ふいにわからなくなってしまったんだろうと。
誰もがどこかに自分の栄華への野心を持つなか、誰もが院の敵であるなかで、信西だけはちょっと違っていた。でも院は信西をも敵とした。
そう分析しつつ、兼実はこの躁気味でいて鬱屈した王者の追憶を終えます。

■この4人の立場、とくに兼実のこの時期の状況に思いを馳せつつ読むと、味わい深さが増すように思います。
院の実体がなーんにも見えてなかったよ、と全部なくしてしまった時に気づき、正直に告白する兼実はちょっとかわいいっすよ。
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by mmkoron | 2008-03-08 18:20 | 書籍

    

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