源平観戦日記


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ヨウ[火華]輝妃

市川ジュン 著/あおば出版/780円/2005年発行

■「朝務は偏にかの唇吻にあり」と兼実の眉をひそめさせ、その権勢を楊貴妃にたとえられた、後白河院の寵妃、丹後局こと高階栄子の半生を描く漫画です。
■栄子が主役ですから、普通の源平モノには出てこない、彼女が平業房の妻だったころの姿が描かれてるのは面白い。業房は、あまり大胆なことはできない、よくも悪くもフツーの中流貴族として描かれてます。でも栄子は、彼とともに成り上がる夢を抱いている。
男に子どもを与えることが最大の任務だなんて、そんな人生やだ。私は業房にもっとデカいものを与えてやれる女なんだ。
そういう自負を持つ女性として描かれてます。
■しかし、業房は後白河院鳥羽幽閉のどさくさの中で、清盛の手の者によって非業の死を遂げる。そこで彼女は、平家に対する恨みを晴らすことを悲願とするようになります。
だからこそ、後白河院にお仕えし、抱き寄せる腕も拒まない。
と、書くと悲壮な覚悟をした女性のようですが、そうでもありません。

■次第に彼女のもともとの資質が前面に出てきて、彼女は自分が世の中を動かすのが楽しくなってくる。
当初は夫の無念を晴らすための手段であった「権力」ですが、実は彼女にとっての目的だったわけですなぁ。なので、あくまでも栄子はしたたかに元気で、明るい。
■平家が仇役になってもいいはずなんですけど、実は平家の出番は非常に少ないです。
むしろ栄子の仮想敵は、九条兼実。
栄子を否定する男尊女卑な男社会、旧態依然とした世間の象徴がこの作品では兼実であり、上昇を続ける栄子にとっての敵は彼なのです。
子ども時代にちらっと出てくる兼実は可愛かったのに、すっかり地味なおっさんになってたのがかなしい…。

結構ウーマンリブのかほりがするお話なので、そういうのが苦手な人にはしんどいかも。
別に栄子が作中で主張するわけじゃなく、彼女はあくまでも女性の代表としてではなく自分ひとりの野望をかなえようとしてるんですけど。
作品自体がウーマンリブな香りをほのかに放ってる気がしたんですよね。
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by mmkoron | 2006-06-14 22:11 | コミック


異次元スリップバトン●まみころ回答


お友だちの麹屋さんが、「平家全盛時の京の都」に飛ばしてくれました。
水刺間(@チャングム)に飛ばしてくれとお願いしたのに。国違うし、時代も遡りすぎですよ…。

1.目が覚めるとそこは?
宇治川のほとりで倒れてるのを拾われて。
ちょっと日本史年表の情報を話したら
すげーコイツ未来視できるよってことになって。
「宇治川の娘」とか呼んでもらえて。
カプター大神官に「黄金の娘、欲しい…」とか
言われたらもう最高っすね!!(かなり混乱中です)


2.貴方には不思議な力が備わっていました。その能力は?

うわー、何にしよう、ワクワクしちゃう~!
スプーンおばさんみたいに小さくなったらどうかな?とか、
いやいやむしろ巨大化できるってのもどうだ?(倶利伽羅峠もひとまたぎ~♪って!)とか、
バンコランみたいに目で殺せるってのもステキだぞとか、
いろいろ妄想が膨らみましたが、
そもそも言葉が通じないと先に進めないので、
「古文文法・古文の発音でしゃべれる。気の利いた和歌のひとつでも詠めたらなおよし。」
でお願いします…ああ地味なところに落ち着いてしまった。


3.何処からどう見ても不審人物な貴方は、その世界の最高責任者と面会する事に。
どうします?

最高責任者というと清盛でしょうか。
建春門院様あたりの女房にさせてもらえるよう、土下座して頼み込む。


4.何とか受け入れて貰えましたが宿がありません。
誰の家に泊まりますか?

どこに行っても不審者ですよ…。
仕方なく西八条邸の軒下でしょんぼり座ってたら、
炊事場のおばさんに
「そんなとこに座り込んでないで、こっち来てこのおにぎりでも食べなさい」
と声をかけられて、
私はおにぎり噛み締めながら、千年の時間を経ても変わらぬ人の情けに涙するのでした。
って、女房になれたんじゃないのか、私!


5.貴方がこの世界で必ずやりたい事は?

南都攻略のときに、重衡を何がなんでも病欠させる……
とか思ったけど、それって他の誰か、知盛とか維盛とか通盛とかが代わりに行くことになるだけですね。
気持ちを切り替えて楽しいことを考えます。
明月記にも建礼門院右京大夫集にも吉記にも玉葉にも
「あの日のアレはスゴかった」と一斉に書いてもらえるような、何かデカいコトを一発やりたいです。
後白河院五十の御賀でサルサを踊る、とか。
鳴り止まぬ拍手喝采の中、院と「あの鐘を鳴らすのはあなた」をデュエットで熱唱。


6.貴方は元の世界に戻れる事になりました。どうしますか?
皆に似顔絵入りの湯呑み茶碗を配って(会社で誰かが異動するときはその人の似顔絵色紙を描く係なのです、私)、帰還。
湯呑みが九州とか四国とかで発掘されたら泣くかもしれん。
西八条邸のガラクタの中から掘り出されたら、別の意味で泣くかもしれない。


7.おかえりなさい。次の人をどの世界にスリップさせますか?
シブりん、ぜひ、数年前から時間を止めている(笑泣)、十二国記の世界に行ってきてください。
ギョーソー様によろしく。その前にサイトはやく開設してください。
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by mmkoron | 2006-06-14 21:46 | 余談あれこれ


通盛の妻(『定本花袋全集 12巻』に所収)

田山花袋 著/臨川書店/7800円/1994年発行(S11年刊の復刻)

■「通盛の妻」つまり、小宰相主人公の話です。
オリジナルの登場人物としては、小宰相と通盛を見守る「柏」という乳母を配していますが、そのほかはほとんど平家物語にも名前の出てくる人物たちです。
■先日、山田美妙の小説を紹介しましたが、著者の時代が下ってるだけあって、かなり小宰相の内面描写をフォーカスする、いかにも近代文学チックな内容になってきてます。
田山花袋というと、「去った女の布団をくんくんして、残り香に埋もれて涙にむせぶ中年男を描いた人」に終始しがちなわけですがってそれは私だけですかすみません、この小説の通盛は硬派にイイ男なので、くんくんしたりはしません。
でも、二人がいちゃいちゃする描写は、1行くらいなんだけどなまめかしい。さすが田山花袋!
■じゃあ、そのくんくん路線を誰が担っているのかといいますと、なんとダークホース


左中将 清経。


過酷な九州への逃亡時に、なんとなく小宰相のところにご機嫌伺いに来るようになった彼は、その後ハマりこむように、小宰相の局を日参しだします。
最初のうちは上手な笛が聴けてうれしいので(通盛は忙しくてあまり会えない)、合奏したりしてた小宰相なのですが、だんだん「これはヤバいな」と流石に気づきはじめて、距離を置くようになる。
それでも清経はせっせと日参して、散歩に誘ったりお花を持ってきたりしてるんですけど。
でも、ある日、清経がまたルンルン気分で小宰相のところに遊びに行ったら、

向こうから、お散歩から帰ってくるんですよ、小宰相と通盛が。

「なんだかいつもと違う感じだよ、どうしたの?」とか通盛に訊かれたり、ふたりがフフと楽しげに目で会話してる様子を目の当たりにしちゃって、人知れずハートブレイクした清経君はその場を去ります。
その後です。清経君の様子がだんだんおかしくなるのは。
とうとう最後には、本三位中将のこと、大臣のこと、女院のこと、通盛のこと、さらには小宰相のことまで誰彼構わず悪口めいた批判を口にするようになってしまいます。
小宰相が私のせいなのかなと気に病んでいるころ、丁度平家が九州から四国へ渡るという時期、情緒不安定がMAX状態に達した清経は舟の先端から海上へ身をおどらせ…。
■と、長々と書いてしまいましたが、小宰相よりもむしろこの清経が印象的です。
私が、「片思いしてる人」にものすごく肩入れしてしまうからだと思います。
片思いキャラ、好きなんですよ。大納言典侍の漫画を描いたときに、重衡の気持ちをあまり描こうと思わなかったのも、主人公を片思いっぽくしておいたほうが、主人公のことを好きになれるからだと思います。
そうそう。たまに「あなたが平家関連の小説を読むときは、やっぱり自分が描いてる顔で想像してるの?」と訊かれますが、普通はどうなんですかね。
私が描いてる顔は、いろんな本を読んだときの、自分の想像した顔の折衷案のようなものなので、かなりイメージに染み込んでます。
でも、本を読むときは自分とこの設定と、二次元が微妙に入り混じったような、何かポリゴンめいた顔で想像してます、多分。でも、この清経はちょっと違った。うーん、イメージ引っ張られて顔変えちゃうかも…もっとツリ目顔がいいな。このお話なら。
■それはそれとして。
他に出てくる人物で印象に残るのは、序盤、小宰相の車に追いつこうと必死で追いかける侍女・柏を見つけて、道中気遣ってくれる経正(作中では「経政」。政治経済に強そうだ…)。
セリフがあるわけでもないんだけど、細やかで親切でいい人だなーって思います。ほのぼの。
■わたくし最愛の重衡は、維盛同様に「奥さんを都においてきた」って設定になってます。
で、なぜかこの作品中ではボロクソ。
人の奥さんに声かけまくってる、とか、ヘンな噂流したり流されたりしてる、とか。
通盛にふがいない人呼ばわりされてて哀れでした。
哀れといえば、維盛。
小宰相に「あの人は、鳥の羽音に驚いて逃げ出すような人ですから…」とか言われてた。

あんたの夫も倶利伽羅で一緒に負けてるってばよ…(涙)。

小宰相は、何かと口うるさい教経のこともスキじゃないらしく、一の谷直前に「教経には会わなかった?」と訊かれて

「あんな情け知らずな人…」

結構毒舌だよこの小宰相。
そういや、一の谷前後で「教経の北の方」って人が数回出てくるんですけど、この奥さんがまたチャキチャキしてて、面白かったです。
「早く船に乗って、乗って! もうじき乗りたくても乗れなくなりますよ!」
ってなコト言ってたりして。教経と一緒には出てこないんだけど、想像すると面白い。
■通盛の運命は平家物語どおり。一の谷で戦死。
ここに来て初めて、清経の心がわかった気がすると言う小宰相もまた、海上に身を投げるのでした。

■小宰相の、男女の愛ではないんだけど、清経をなんだかほっとけないという気持ち。清経の追い詰められてく様子や「人生というものがわかってきました」という寂しい呟きなど、見所たくさんなのですが。
一番リアルだなーって思ったのは、九州退去のときの荷物運び。

「有盛殿のところに車があるから、軒先に荷物を出しておけば、一緒に積んでいってくれます」

ってのが、ものすごく「ああ、ありそうありそう」と実感できるセリフで、妙に印象に残ってしまった…。
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by mmkoron | 2006-06-13 21:36 | 書籍


平重衡(現代戯曲全集第18巻に所収)

久松一声 著/国民図書/1928年発行

タイトルがわかりやすくズバリ重衡なので、探して読みました。短い話で、内容はいたってシンプルです。
業火の悪夢に苦しむ重衡。でも夢の最後に救われる光景を見ています。
いよいよ南都に送られるという日。彼のもとへ、重衡との間に一子を為した女房が駆けつけます。

また女がらみの話だよ、重衡…。

子どもは男の子ですが、男子とわかれば殺されちゃうので女装させ、芸人のフリをさせてます。
で、その子が父の前で、ハッキリ名乗りあうこともできぬまま、別れの舞いを舞うのでした。
最初の悪夢のあたりが、コロスが重衡を囲んで唱和する演出だと思われますから、セリフよりも唱和や舞いによる抽象的な表現を中心に据えた劇なんでしょうね。
劇を見てみたい。
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by mmkoron | 2006-06-13 20:57 | 書籍


桜卒塔婆 平野英男戯曲集

平野英男 著/戯曲春秋社/2000円(本体価格)/2002年発行

「平家残花」と題し、源平題材のお話を5編載せています。

「桜卒塔婆」
■囚われの重衡と、千手の物語。
重衡と頼盛、頼朝の会話シーンがありますが、重衡が頼盛にかなり冷たい。
「京に帰ることになっていたのだが、お前(重衡)がこちらへ送られてくると聞いて、ひと目会おうと思って待っていたのだ」
「私は会いたくなかった」
とかいうやり取りがあるんですよ。それでも一生懸命重衡をなだめすかす頼盛おじさんがいじらしい。この時点では、おじさんは重衡がまさか殺されるとは思ってなかったのでした。
■このシーンは前フリで、本編は重衡と千手です。最初の宴会では、頼盛おじさんへの態度同様に無関心・無反応だった重衡が、重衡の出家の意を頼朝に伝えんとせっせと働く千手を見て、だんだん態度を和らげ、いよいよ南都へ発つことが決まった前日の宴では、千手と合奏し、唱和するのでした。
で、出発時に千手が「重衡さまの往生を祈っています。もうひとり、この子と一緒に。」って。

重衡、お前、いつの間に。

■そのほか、大納言典侍も重衡に「奥」と呼ばれてちょこっと出てきてます。この戯曲では、重衡は今更会ってもかなしいだけ、と言って、対面することなく別れの和歌を詠みあってます。


「巴殿無残」

松殿基房の娘とべったり相思相愛な義仲に、じっと我慢のコで付き従う巴のお話。
このお話の巴は、首討たれた義仲の元に舞い戻ってきます。
討った連中を蹴散らし、義仲の首を抱えて「やっと私ひとりのものになった」。こえー!
ちょっとサロメ風?


「唐糸そうし」
これも義仲絡み。義高と大姫のお話です。主人公が、義高に武術の稽古をつける侍女。
彼女の視点寄りでお話が進行します。
前述の「巴殿無残」もですが、この一連の作品では、義高の生母は巴ってことになってます。
後半の大姫のしゃべりが妙に大人びてて、ちょっとこわい。


「維盛」
■飢饉に耐えかねて村を出て、漁村に現れた農民ふたり。
二人はそこで村を仕切っている男(塩づくりが本業…だったと思う確か。コピーしてきてないので枝葉がうろ覚えです…)の世話になります。
今度は高野山から法師が流れ着き、そのとき農民ふたりが法師にこっそり話しかけます。
“もしやあなたは平景清様ではありませんか? 私たちは平家の落ち武者なのです…。”
そんな話をしてるときに、塩づくりの男が話に割って入るのです。
よく見ると男の顔は、
後白河院の五十の御賀で舞を絶賛された、維盛卿ではありませんか…!
このお話は壇ノ浦の10年後。つまり、維盛36歳。萌えー。(←失言)
■微妙に「義経千本桜」風のお話ですね。でもあっちの維盛のよーに無事では済みません。
この維盛は、頼朝に一矢報いんと決起しちゃうのですよ…。あああ。
最後の場面、深い傷を負って苦しみながらも、死にたくない、頼朝の首を見ずに死にたくないとうめく維盛の姿は悲しい。
我が身に「死んではならぬ、維盛、維盛…」と言い聞かせながら。
これをホントに劇で観たら、このシーンだけで泣いちゃうかも。


「 大納言流罪」
どちらの大納言さんの話かしらと思いましたら、時忠さんのお話でした。
武家平家に寄り添いつつも、公家平家としてちゃっかり自分の家の繁栄を画策する時忠さんの物語。すみません、時間が足りなくてかなり読み飛ばしてしまいました…。
もちろんタイトル通りに最後は流罪。
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by mmkoron | 2006-06-13 19:55 | 書籍

    

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