源平観戦日記


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双調平家物語

橋本治 著/中央公論新社/全15巻/1685-3200円/1998年1巻発行

■ついに2007年10月に完結しました。最終巻を本屋さんで見つけたときの感想は


…厚っ!!


2冊くっついてるのかと思いましたよ。レジ持っていったら3200円って言われて驚愕。お財布の中に5000円しか入ってなかったから、その日は残り1800で過ごしました(銀行行け)。
■1巻の副題は「栄花の巻」。
平家の栄華なのかしら?と思いきや、なんと楊貴妃とか安禄山の名前が。確かに原典も「遠く異朝を訪へば、秦の趙高、漢の王莽、梁の周異、唐の禄山…」で始まりますから、ある意味原作に忠実…なのか?
そして第2巻になっても平家のへの字もなく、舞台は日本にはなるものの、主役は蘇我氏。そこからスタートして、ようやく保元の乱が始まるのが7巻とかそのあたり。で、いわゆる源平合戦は14・15巻。
治承・寿永の戦いはエピローグ的な役割でして、正直、盛り上がるのはその前までの部分です。でも、この小説はそれでよいのだと思います。
この小説が描くのは、ふらふらと吸い寄せられるように寄って来る虫たちを養分にして咲き誇る、都に咲く栄花という花の、底なしのうつろな美しさなのでしょうきっと。

■実は自分こそが「栄花」そのものなんだ!
…と、誰かが幸福の絶頂に立ってそう思った(錯覚した)とたんに、「栄花」はその人を見放し、分離してしまうのです。
見放された人間は「えっ、えっ、どうして?」とポカンと立ち尽くしたまま、背後から押し寄せる時代の勢いというヤツにもみくちゃにされて姿が見えなくなる。
自分が栄花ではないことを自覚して用心深くしてる人もいるのですが、そういう人も、いつの間にか栄花の毒気にあてられ、傷ついてパタリと倒れてしまうのです。
この本では延々その繰り返しが描かれてます。
藤原頼長や待賢門院・美福門院や木曾義仲は前者の部類、重盛は後者の部類だと思いながら読んでました。
でもね、「栄花」に見放されて立ち尽くす姿が、読者からは魅力的なんですよ。ものすごく不幸ではあるんだけど、でも追い立てられて自分じゃないモノのフリをすることから解放されているといいますか。その姿が哀れっぽくもあるんだけど、すごく人間らしいんですよね。
我に返らないまま命を全うしちゃう人もいるんですけど、そういう人物は大抵読んでてちょっとコワいキャラだった(^^;
■しかし、「栄花」と、そのお花が咲いてる都という花壇も、だんだん均衡が崩れていきます。
栄花と一体化した平家は、見放されながらも、最期は栄花の花びらをもぎとって心中してしまった……って状態なのかな。
三種の神器のうち、剣だけが結局沈んで浮かび上がらなかったことが、象徴的に描かれています。「力」が、後白河の手にはもう戻らなかったのだと。
平家は何に押し上げられ、何に力を奪われたのか。そして「滅ぶ」ところまで追い詰められたのは何故なのか。
それを描く物語だから、やっぱり平家以前の物語こそが重要だったんでしょうね。
しかし平家物語ってタイトルの本開いて、5巻とかになっても奈良時代だったらビビりますよやっぱ(笑)。おどろいたわー。

■で、平家のメンバーについてですが。
まず、女性は非常に印象薄いですね。そのなかでは、出番短いけど盛子あたりは心に残りましたね。しかし女性は院政期あたりの人たちがおもしろかった。
平家で一番魅力的だったのは、なんといっても清盛。
私は、この清盛は最後まで栄花に喰われることに抵抗してた印象あります。ある意味、スレてない(^^ 後白河の態度にいちいち傷ついてるのが可愛かった…。
重盛も良かった。この人は若い頃と晩年とでどんどん性格が動いて行ってましたね。若い頃は花にのぼせてるところもあったんだけど、年とるとすごく慎重になってる。
平家について、その繁栄が結局空回りであろうことに自覚的で、行き詰まりと閉塞感とに押しつぶされながら倒れていく姿が印象的でした。そして、それに対して理不尽だ!と怒ってしまう清盛も。
■宗盛・知盛・重衡・維盛…あとは教経あたりもわりとよく名前は出てきましたが、でも各人の懊悩を腰を据えて描くってカンジではありませんでしたね。ここらへんの人たちになるともう、渦の中でくるくるしてる小エビさんのような扱いというか。
重衡とか最後フェイドアウトだし。死んだことが書かれてなかったんじゃないかな。
維盛もあっさりしてましたね。でも、病気で屋島に篭もっちゃったときの「自分の無能に直面するのが怖かった」ってのはすごくわかる、と思った。
自分に今まで必要とされてなくて、有るのか無いのかも意識したことがなかった能力をいきなり突きつけられてしまうのって、コワいですよね。そりゃ病気にもなるわ。
■そのほかは…義経とかはわりと淡々と書かれてます。義仲のほうが、「ビッグになりたい」的な具体性のない野心で上京してきたのに、それがだんだん歪められて疲弊していく姿が哀れで、印象に残る描かれ方でした。
きっと私も、いきなりこの世界に放り込まれたら、壊れちゃうだろうなぁ。最初は「こんにちはー」と元気に入っていくんだけど、だんだん自分を飾り始めて、次は飾るのに疲れて引き篭もり、最後は「どうせ庶民だよ、お上品じゃないよ! うるせーほっとけ!お前らが何ほどのもんじゃい!!」と逆ギレして暴れだすという…(T_T

■なんだか感想がまとまっていませんね。
おそらくしばらくすれば、この本の解説本・構想表ともいえる「権力の日本人」の続編である、「院政の日本人」が出るはずなので、それを読んでからまた考えようと思います。
私、橋本氏の文章って、2週以上読まないと内容が頭に入っていかないんですよね…とほほ。この、教養という名のうるおいに対して防水加工された、自分の脳味噌が憎い。
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by mmkoron | 2007-11-08 23:32 | 書籍

    

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