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源平観戦日記


第13話「祗園闘乱事件」

■今回は祗園社との騒動の回です。っつっても、ドラマとしては地味な事件です。当時の寺社勢力との関係のことを説明してないと、何をそんなに大騒ぎするのか伝わりづらいし。でも、その説明が面白いとも思えないし。
■で、結果としては、騒動そのものはあっさり描き、白河院の影響を筆頭としたしがらみ全般を逃れられない、鳥羽院の心理描写を中心にしてました。私、このドラマの、こういう情報の割り切り方が好きなんですよね。
こういう時代物ドラマって、視聴するときの

・こっち側からの「あれやこれをこんな風に描写してほしい」と希望があって、それが実現されるかどうかで評価する
・あっち側から与えられたものをそのまま受け取って、その意図を受け取ったうえで「それは面白い、これは面白くない」と評価する

この2つの受け取り方は似てるようでかなり違ってて、私が他人の評価を見て「うーん」って思ったり、逆に私のほうが叱られたりするのは、そのへんのスタンスの違いなんだと最近じわじわ分かってきました。

■脱線しました。で、この騒動ですが、清盛(というか兎丸)が昔なじみと始めたケンカが発端でした。
平家は、兎丸一党や盛国を検非違使庁に差し出す「トカゲの尻尾きり」でその場をしのぎます。が、寺社側はそれだけでは収まらない。忠盛&清盛の流罪を要求?して神輿をかついで宮中に向かいます。
兎丸たちが、「すぐに助け出す」と小声で言う清盛に対して、「獄暮らしは慣れとる」ってさらっと言うのがいいですね。清盛に従っていることを当てこすられて激怒した兎丸だけど、清盛との信頼関係に揺らぎはないのねと。
おとなしくしているしかない平家にかわって、強訴を阻止するのは源氏。しかし、天台座主明雲は「射てみろホレホレ」とばかりに、神輿を前面に出して挑発します。
さて、ここに「神輿の威を借るナントカ」そのものの位置づけで、弁慶初登場です。
背に負った箱に七つ道具みたいな謎の道具を入れてて(しかし鉄の熊手が普通の熊手だったので、ただのお掃除スタッフに…)、「弁慶っぽさ」がちゃんと演出されてるのが笑える。
先頭に立ってうろちょろして、完全にただのお調子者のヤンキーですな(笑)。めっちゃ強気でぎゃーぎゃー言ってるのに、神輿が射られた途端に腰を抜かしてるトコとか。
この弁慶が、のちに常識破りしまくりの義経を信奉しちゃうのは、ちょっと分かる気がする…。
■さて、「うりうり、射れるもんなら射てみろよ」という挑発にギリギリしている源氏を飛び越して、一本の矢が神輿を直撃します。
腰を抜かして「おおーおおー」と叫ぶしかない弁慶の目線を負った義朝は、矢を放ったのが清盛であることを知ります。

■その結果、いよいよやばいぞと平家一門は家族会議。
「わざとじゃないですよね」「故意に射るバカなんていない!」でみんなが納得しようとするところに、「狙っていたのだ」とKYかつ正直に申告する清盛。
心底祟りを怖がっている伊藤忠清がプリティー。清盛「あんなものはただの箱じゃ!」→忠清「ひぃー」 のやりとりが(笑)。この直前の「故意に射るバカなどおるか!」「わざと射たのじゃ」のやり取りもだけど、緊迫しつつ笑わせるところで、「事件としては深刻だけど、ストーリー上ではこの事件の罰そのものは重要じゃないですよ」ってのを感じます。

■罰せられる前に、自分たちでお詫びモードに入ろう・・・と、自ら検非違使庁に入り謹慎する忠盛と清盛。
家族会議では清盛をぶん殴ってみせた忠盛ですが、実際はむしろスカっとしてたようで、せいせいした表情で謹慎に入るのでした。
■今度は朝廷が清盛たちへの罰でもめています。
 忠通・家成…平家の武力財力は現在の政に欠かせない。寺社側の言い分で安易に罰したくない。
 頼長…武士などが力を持っていること自体がそもそも間違い。これをチャンスに一掃したい。
って状態です。忠通と頼長のパパ・忠実は、頼長派。自分のお父さん・師通が神罰で若くしてなくなったことを引き合いに出し、チクリと鳥羽院を刺します。
(師通のくだりは、平家物語巻1「願立」にも出てきます。拙サイトの各話紹介にも師通はちょこっと登場しますので、ご覧くださいませ~)
■パパは味方してくれましたが、頼長は、自分と意見を同じくすると思ってた信西が反対意見だったのがショックだった。信西は、頼長の才を評価しつつも、彼の目標が摂関政治の復活であり、それでは「才ある身分の低き者」である自分たちが活躍できるチャンスがないことをわかっているのです。ゆえに、「俗世にて、自分の務めを果たす」と頼長に告げて去っていきます。
ここの「俗世にて」って、頼長の理想に現実味がないことの皮肉なんでしょうね。
これにはらわた煮えくり返る頼長。彼は非常に優秀なんだけど、周囲への配慮のなさ、「マイルールの押し付け」っぽさが徐々に出てきてますね。私もそういうイメージを持ってたので、ここはわりとイメージどおりだわ。

ところで、頼長のこの性格って、彼の息子たちよりも忠通んところの兼実がちょいキャラかぶってる気がするんだよなー。兼実のほうが、鬱憤を外側に発散しないので(悪く言えば、「文句言ってるだけ」)、世の中で煙たがられながらも生きていける程度の濃さなんだけど。

■朝議は忠盛親子をどうするかで意見がものわかれ。源氏側も、平家がこの先どうなるか気になっています。とにもかくにも源氏の武をここでアピールするしかない、という為義の隣で、義朝は少年漫画のライバル役モードになっておりました。
「誰が清盛を流罪になどさせるものか…こんな形で俺の前から姿を消させてたまるものか…!!」
めっちゃコテコテだがね!
■なんだかんだでずっと謹慎中の忠盛親子に、妻たちは差し入れを準備します。と言っても、着物などを準備してくれた宗子に対して、時子からは双六セットのみ(笑)。
時子からしてみれば、勝手なことをして皆に迷惑をかけた清盛のオイタへの罰なのです。彼女の、清盛のバックボーンを理解しない無邪気さは、逆に清盛を明るいほうに引っ張ってくれますね。
さらに、やけくそ気味にたらふくご飯を食べていたら、腹を押さえてうずくまる時子。食べすぎ…ではなく、いよいよ出産です。うわー宗盛生まれちゃうのかぁー。

■そんな出産騒ぎの折に、運よくなのか悪くなのか、「目の前で清盛を罵ってショックを与えた詫びを言おうと」忠正が訪れます。時子はぜんぜん気にしてなさそうなのにね(笑)。
ちょうど良かったとばかりに、出産の手配をしている間の子守役を頼まれてしまう忠正。子ども達に作ってあげてるおもちゃがおもしろいね、お馬さんかわいい。
時子に赤ちゃんが生まれたら、自分たちはもう今までどおりに接してもらえないのではないか。そんな不安を口にする重盛に、「そんなことは断じてない、そんなことは気にせず、生まれてくる子をうんとかわいがってやれ」と忠正は強く励まします。ここはうるっとくるわ~。誰も好き好んで血のつながりの有無で争わない…という忠正の言葉に、自分も本当は争いたくないという思いと、清太たちは争ってほしくないという思いが見えて。
ここまでの忠正は、あくまでも「家族として」、その甘えというか親近感がある中で清盛を嫌ってるんですよね。それが、そうではなくなってしまう時が来るのかと思うと…ううう。
■清盛と忠盛は双六中。
忠盛はぽつりぽつりと舞子の思い出を口にします。白河院と、無責任なお告げにひとりで立ち向かった女性。
そして忠盛はずっと待っていたのです。清盛が、母と同じように、あてのないルールに立ち向かうときを。今まで清盛はさんざんいろんなことにタテついてきましたが、ただ自分の気に入らないものにタテつく時期を経て、だんだん彼は反抗に筋を通すようになってきた。それを忠盛は待っていたのです。

■家族の会話がほのぼのしている間、朝議はますます紛糾。
頼長はこれをきっかけに、清盛の余罪を調べ上げて叩くつもりです。あくまでも調べ上げていて、でっちあげではないところが、頼長のチャームポイントでもあり、弱点でもありますね。
頼長は、捕らえたはずの海賊連中を平家が自分の部下にしていることを断罪しますが、信西は効率的な掌握術だと逆に評価します。信西が長台詞で自分の政治プランを語る場面は全然ないんですけど、「使える人材は使いまくって、国直属ではたらく力を集める」って感じなのかな。
■長会議にぐったり気味の鳥羽院。
彼は白河院の呪縛から自分が未だに解き放たれていないことを感じ、苦しんでいます。
白河院の呪縛を払拭したくて、彼の息がかかったもの(たまこ様含む)を遠ざけてきた。しかし、それすらも白河にとらわている証ではないか…そう思うようです。

■そんな鳥羽院は何を思ったのか、検非違使庁の清盛を訪ねます。
そこで問います、神輿を射たのは手違いか、それともわざとだったのかと。
■院みずからの質問ですが、院が何を思って質問したのか意図はわからない。しかし、ここで何を答えたかによって、清盛の運命は決まる。清盛はゆっくりと口を開きます。
彼の決意の表情と、運を託すかのようにサイコロを握り締めるしぐさを見てれば、「わざとだ」と答えるのはわかります。ここの動きもいいなぁ。
清盛から「わざとでございます」とはっきり聞いた鳥羽院。おもむろに両腕をひろげます、さながらジュディオングの「Wind is blowing from the Aegean~♪」のように。
曰く、「神輿を射たときのごとく、朕を射てみよ!」。その言葉に、清盛は前を見据え、見えない弓を引き絞り、矢を放ちます。
■このシーン、撮影時は音がないわけですよね。うわーそっちを観てみたかったー!
まっすぐに院(というか、その向こう側の何か)を睨み据える清盛もですが、それ以上に、何かにおびえつつも何か期待しているかのような鳥羽院の目がすごい良かった!
放たれたのは矢だけではありません、その瞬間に鳥羽院も、心の底の重石から解き放たれたのです。
鳥羽院は「白河院と朕が乱しに乱したこの世に放たれた一本の矢だ!」と清盛に最大の賛辞を送ったのでした。
「何にも振り回されず、まっすぐに突き進む信念」というものが鳥羽院は見たかったんですね。それをモデルにしたかったし、「それができないお前は、だから駄目なんだ!」と引導を渡されたかった。
こういう救われかたってあるんだなー。なんつーか、Mな救済

■というわけで、忠盛親子は無事に罰金だけで放免されました。父上も兄上も戻ってくるとなって、上機嫌で母親のもとに向かう家盛に、母・宗子の声が聞こえてきます。
宗子は、忠盛の心の中心を亡き舞子(「前の奥方様」と言われてるけど、実際はプラトニックで終わった感じだよなぁ)が占めていることに傷つき続けています。
その本心の吐露を聞いてしまった家盛。彼は、そのまま、三男誕生を喜ぶ清盛邸を訪問します。そして、なんとここに来て清盛への敵対宣言を放ちます。
兄上を嫡男として認めることはできない、これより先は私が一門を背負う…と。
■これ、今までの家盛の描写がなかったら、彼の突然の心変わりは意味不明だけど、かなり今まで丁寧に彼の描写があったので、理解するとっかかりがありますね。
家盛は、自分を取り巻く環境や人の心に対して、自分があまりに「能天気」であったと思い、自分を責めたんではないでしょうか。
彼自身も家のために好きな女性を諦めたり、海賊退治行きを兄に譲ったりと、常に一歩引いたポジションですが、別に彼自身はそのことについて父や兄に対する不満はなかったですよね。むしろ、自分が不満なくニコニコしていることが、母親である宗子をも幸せにすると思ってたんじゃないかと。
でも、ココにきて大人になった彼が宗子の忍耐を見た。彼が思ったのは父や兄への怒りではなく、彼の今までの性格描写に即してみるなら、「何も考えずにのほほんとしてた自分が申し訳ない」でしょう。
だから、勇気を振り絞ってお兄ちゃんとこへ決別宣言に行ったんでしょうね。

■実際の家盛と清盛がどういう兄弟だったのかはわからないけど、解釈の自由度が高いこの二人の関係を、あえてこういう複雑な形にしたのって、どういう意味があるんでしょう。この二人の関係は、のちの重盛と時子腹の兄弟たち(このドラマなら特に宗盛か)や、ひょっとすると頼朝と義経にもお話として反映されるかもしれないので、清盛&家盛が単純な仲良しでも敵対関係でもないことの意味が、のちのちわかるといいなと思います。

■さて、次回はいよいよ頼長の男色シーンですか。
私は、舞を担当した家盛に目をつけて…って流れは、ウマいなって思ったんですよ。舞で目をつけたのって、古今著聞集とかで頼長が舞人に手を出した話が出てくるからですよね。
そういうちょこっとの記述を入り口に、そこからぐぐっと広げる手法って、創作として好きです♪
■前にも書きましたが、摂関家と清盛たちとの政治的お付き合い以上の人間関係をドラマにつくっとかないと、保元の乱が単なる「どっちにつく?」話になっちゃうと思ってたんです。「新・平家物語」を観た印象がまさにそれだったんですよね。
でも、清盛主役でやってこうと思ったら、清盛自身が崇徳や頼長に対して私的な思いを持ってないと、「出来事ドラマ」になってしまう。この清盛なら崇徳は白河つながりでいけるとして、摂関家はどうするんだ?と思って宝、「なるほどー」と目からウロコです。
しかし、今までの頼長には(あと、鳥羽&家成にも)そういうのを匂わす描写はなかったわけで、「えっ、どうしてここで押し倒すの?」になっちゃう気はするんですよね。そのへんがどう処理されるのか興味津々。
■いやはや、どんな描写になるんですかね。
草燃えるが相当だったので(DVDで観た。演技のビミョーさと、映像の暗さの相乗効果で、かなりエグく感じたんだけど)、少々の描写なら気にしない自信があります(笑)。
by mmkoron | 2012-04-07 19:33 | 大河ドラマ「平清盛」

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