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源平観戦日記


能・狂言・平曲による平家物語の世界 語りの伝承~巻十七

2014年8月2日/於横浜能楽堂/13:00開演 15:30終了

【演目】
狂言「吹取」(野村萬斎 深田博治 飯田豪)
平曲「千手」(須田誠舟)
能「千手」 (桜間右陣 ほか)

■前に「維盛」を見に行ったのっていつだっけ、とこのブログで確認したところ、もう5年も前だったんですね。いやーおどろいた! そんなわけで、久々に見てきました。
毎年、このくらいの時期に、平家物語を題材に平曲と能と狂言を上演している会です。
前と変わらず、なにかの教室の仲間なんですかね、ほとんどのお客さんは知り合い同士って感じです。私はもちろん完全アウェーなのですが。
■変わってたのは上演順ですかね。確か前に見たときは 平曲⇒狂言⇒能 の順番だったかと思うのですが、今回は 狂言⇒平曲⇒能 でした。今回は、平曲と能の内容(平家物語中の、扱っている箇所)がほぼ同一だったので、連続にしたのかなと思います。

■まずは狂言。今回わたくし運がよかったのか悪かったのか、1列目だったので、萬斎さんにあと3M!くらいの距離で観ることができました。「花の乱」以来の萬斎FANとしてはラッキー。
■ここであらすじのご説明を。
長年独身でそろそろ身を固めたい武士?の男が、清水の観音様のところでご縁がありますようにと祈願してたところ、「名月の夜に五条の橋の上で笛を吹きなさい、そこに現れた女性があなたの運命の女性です」ってなお告げをうけました。しかし彼は笛の心得がないので、知り合い某さんに依頼して自分の代わりに吹いてもらいます。この日、月見の宴にお呼ばれしていたその知り合い某さんは、仕方ないと来てくれたのですが、笛を吹くのを忘れて月に見入ってウットリしちゃったりで、男をやきもきさせます。
ドタバタしつつも、なんとか笛を吹いてもらったら、お告げどおりに被衣姿の女性が現れました。
んが、彼女は笛を吹いた某さんのほうにふらふらと、いや、力強く(笑)突進してしまう。何度自分のほうに連れてこようとしても彼女が某さんのほうに行っちゃうので、男は観音様の決めた縁があるのは自分のほうだから、と必死に女説得する。そんなとき女の被衣がはらりと落ちて…。
彼女の顔を見て絶句する男2人。そこから男2人の醜い押し付け合いが始まるのですが、男の説得にほだされた女のほうは、独身男を追っかけて…。
■とまぁ、こんな感じです。萬斎さんの笛の演奏を聴けたのはなかなか貴重だったかも。吹く真似だけするのかなと思いきや、ちゃんと演奏してたので「おおー」と思いました。
■助っ人の某さんが月見に熱中しちゃって、独身男がちゃんと笛吹いてよ!とツッコむシーンなど、ボケとツッコミの内容がわかりやすくて面白かったです。女の顔(舞台では、オカメの面をつけてます)を見て男共が絶句するシーンではお客さん声をあげて大ウケでした。
で、これのどこらへんが平家物語にちなんでるのかっていうと、多分「五条の橋で笛を吹く」つながりかと思われます。ストーリー上で牛若丸を引き合いに出すシーンがあるわけではありませんが。

■次は平曲。前の「維盛入水」のときも思ったけど、いやー相変わらずスローペースで長い!!
すみません、何度か船出しかけました。朗読的なところと、謡うようなパートがあるわけですが、その抑揚が、こう、眠りにいざなうんですよねー^^;
内容は、巻十「千手前」のほぼそのまんまです。覚一本のテキストよりも、修飾が増えてる気がしました。

■最後は能「千手」。これはオリジナル新作ではなく、元々ある演目のようです。
狩野介宗茂に預けられている重衡のもとを千手が訪ね、彼が頼朝に要望していた出家の願いが承認されなかったことを伝えます。がっかりする重衡を慰めようと、狩野は酒宴を催し、千手は朗詠する。重衡は千手の心のこもった慰めに癒されて、琵琶を合わせてくれる。しかし、その後重衡は南都に送られ、千手は泣く泣く彼を見送った……平家物語に描かれる内容そのまんまですね。
重衡はほぼ座ったまま、狩野もあんまし動きがなく、千手が舞うくらいがわずかな動きでした。このお話は場面もずっと同じ室内ですから、能に慣れてない私には、淡白すぎてあんまし面白みはなかったかな。なるほど、能に「●●さんの霊が××の姿で過去の自分を語りにきた」って設定が多いのは、こういう理由なのかと納得。
確かに、そのまんま平家物語をやっても、内容も知ってるからかなりだるい。すこし意外性やストーリーの面白さを持たせようと思うと、夢幻能になるわけか。
■あと、今回は重衡役の方が非常に若く見えました。中学3年とか高1くらい…かな?
一方、千手の演者はベテランだったので、その差が、ストーリーに合ってなかったんじゃないかなとか素人目に思いました。このお話としては、やっぱり重衡のほうが包容力があって上手でないと「ええ話や~」にならないんですよね。千手の心を込めた慰めに、都人の貴人(鎌倉にとっては)・重衡が心を開いて受け容れるという。
でも、今回重衡役が若かったので、千手が坊やの世話を焼く百戦錬磨の銀座ママっぽく見えるというか。イマイチ2人の心情が交わってる感じじゃなかったんですよね。
こういうのって、時間が熟成させていくものなんだろうな。スキルでどうにかなるもんでもない気がする。
おそらく期待の若手だからこそいい役に抜擢してるんだと思うので、平家物語のなかにちょうどいい演目があるといいですねぇ。
■あ、役者さんのことばかり書いてしまいましたが、演奏のほうも趣深くてよかったです。特に今回気になったのが笛! その前の狂言のほうで萬斎さんの笛を聴いてるわけですが、そちらでは吹き始めのときに演技なのか何なのか、すぅっと息を吸うのがかすかに聞こえるんですよね。でも、能のバックで演奏されている方のほうはそれが聞こえない。でも、座ったままの姿勢であの力強い音が出てくるわけで、そこがすごいと思いました。そういや維盛は笛が得意でしたね。肺活量は結構あったのかしら、とかいろいろ妄想がよぎったのでした。

■まったくの余談なのですが、今回の帰りにふと、そういえば私の母校(高校)に能楽研究部があって、仲良かった友だちが入ってたことを思い出しました。1こ上にずば抜けてうまい先輩がいて、卒業式か何かに高砂を謡ってくれたっけなぁと思い出して、名前を検索してみたら、なんとプロの能楽師になっておられた。すごい…。やっぱり高校生の頃から「すごい」人って、それでやっていけるもんなんだなと妙に納得しました。
by mmkoron | 2014-08-04 01:34 | その他映像・劇 等

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